保険の重要性


 私たちが病気や旅行の保険を選ぶとき補償内容、費用など様々な条件を考慮し加入するが、中には保険に加入せず海外渡航をする方も少なくない。今回は保険に全く加入せず出張で来日し、病で倒れたビジネスマンのケースです。

 虫の音が美しく響き渡る10月秋の初旬。相談電話対応終了間際になり一本の電話通訳が入った。大学付属病院よりの電話通訳依頼であった。「海外から出張で来日しているビジネスマンが不整脈で倒れ救急で運び込まれた。現在入院中で容態が悪く肺炎も併発、不整脈状態が続いている。いつ心臓が止まってもおかしくない状態。予断を許さない状況だ。」電話の様子からかなりの深刻さが伝わった。早速電話を受けた担当言語相談員が、父親の急病の知らせで急遽来日したのであろう、不安そうな息子に優しく丁寧に接し電話通訳に入った。「不整脈はペースメーカーを埋め込めば深刻な事態を予防することが出来るそうだ。ぺ−スメーカーを埋め込むとした場合、今併発している肺炎が完治してから手術となり少なくとも2週間の入院が必要となります。」ここでの問題は治療費支払いの金額だ。このビジネスマンは何も保険に加入しないで来日したため全額自己負担となるのだ。入院費、手術代、ペースメーカー代等それは莫大な支払いとなる。おおよその治療費を伝えると当惑してショックを隠しきれない様子が電話から伝わってきた。息子は父親を自国へ連れて帰り不整脈治療をしたいと希望した。医師からは「飛行機に搭乗するには重篤なので医師同伴となるだろう。その上今の状態ではぺ−スメーカーを埋め込んでないのでいつ突然心臓が止ってもおかしくない。この状態で長時間飛行機に搭乗しての帰国は危険だ。」では母国からペースメーカーを持参した医師を呼び寄せ日本で手術をさせてもらえないかとの質問をしたがこちらも難しいようだ。とりあえず時間も遅いので今晩よく考えて明日また電話を入れてもらうことになった。現在の治療費、また日数を掛けて悩むとそれだけ入院費の支払いがかさんでくる。迷っている猶予はない。早く決断を出さなければならない。

 翌朝、再度電話通訳が入った。ペースメーカー埋め込み手術を検討する方向にしたようだった。早速、手術の同意書の説明、合併症、感染、あと起きる可能性はわずかだが出血による死亡が起こりうる危険性がある等の通訳をした。我々スタッフ一同も無事に手術が成功してくれることを願った。それから暫くしてからまた息子から電話が入った。前回とは違い余裕があり落ち着いた様子だった。「今日の午後母国から医師が来日するのだが迎えに行くルートを教えて欲しい。交通機関はどのルートがベストか。」等の質問だった。無事手術を終え医師同伴で飛行機に搭乗して帰国するのであろう。短い期間だったがこの親子は大変な思いをされた。今回のケースのように保険未加入で来日し重篤な病気になってから「支払いが困難だ。どこか援助してくれる団体や機関を紹介して頂きたい。」と相談してくるケースがセンターには非常に多い。保険は僅かな掛け金で大きな補償が得られるものだ。来日する渡航者の方々は是非一度保険の重要性について認識してもらいたい。(センター東京:T)

(AMDA国際医療情報センター NEWSLETTER NO.63より)


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