支え、支えられ


「○○という薬を、来日前から飲んでいる。母国から持参したが、少なくなって来たので日本で処方してもらいたい。」このような問い合わせは割と多い。「もうすぐ日本に行くが、○○という抗うつ剤は日本でも手に入るのか。」といった国際電話もたまに入る。

 精神科医やカウンセラーについての問い合わせも少なくない。ネイティブスピーカーのドクターがよいという要望も多いが、相談者の通える範囲での紹介となると、情報はかなり限られてくる。まして、英語以外の言語での対応のできるドクターとなるとさらに少なくなる。

 そのような相談の一つとして、かかりつけの精神科医と連絡が取れない、一回限り別のドクターに診察してもらい、今すぐ薬を処方してほしい、と消え入りそうな心細い声での電話を受けた。少し時間を貰い、今すぐ外国語での対応が可能な医療機関を確認する。薬のスペルを伝えられ、何度か聞きなおしたが、どうも完全なものではなく検索ができない。相談者の希望する条件にあう数少ない一件の医療機関に問い合わせ、本人の言うスペルをそのまま伝えた。電話口のドクターが、「どうぞ。大丈夫ですよ」と一言静かに答えて下さった。しかし相談者からの再電話がなく、刻々と時間が過ぎていき、ついに診察終了の時間が来てしまった。念の為、再電話がないことをその医療機関に連絡すると、すぐに前述のドクターに繋がれた。体制を整え、相談者を待って下さっていたことがありありと感じられた。そして、不完全な薬名のスペルから、相談者が伝えたかったであろう薬名も色々と考えて下さっていた。

 他の医療機関に問い合わせた際にも、「できる限りのことはします。どうぞお越し下さい。」との言葉を頂いた。忙しい医療機関の窓口に問い合わせの電話をする際には、何かのセールスかと間違えられそうになることもあるので、このような言葉は大変ありがたい。

 結局、その後もこの相談者からの連絡はなかった。今は、彼の問題が解決出来たことを祈るしかない。
 一般的には、相談者への情報提供の後、電話を切る前に、統計の為の国籍を聞く(例外規定あり)。その国の人物や食べ物や産業、何一つ思い浮かばないような珍しい国の場合には、国名を聞き返したり、スペルを聞いたりすることもある。母語の影響を受けたような英語を聞きながら、相談者がこの国で生きていくことの困難を思う。

 多少の不安を抱えながら、有益な情報を求めて電話をかけてくる相談者たちから、最後に、ほっとしたような笑いと「ありがとう。」が返ってくると、少しは役に立てたのではないかとこちらもうれしく思う。

 そして私たちは、このような一期一会を通して触れる医療従事者の熱意や異国日本で前向きに力強く生きていこうとする相談者の気概に支えられ、勇気づけられながら、センターの電話の前で次の相談を待っている。(センター関西:O)

(AMDA国際医療情報センター NEWSLETTER NO.61より)


AMDA国際医療情報センターのホームページ

NEWSLETTER NO.61

ケース紹介目次

image お問い合わせはamdack@nifty.comまでお願いいたします。