母のねがいは


 そのお母さんが息子の身長の話をし始めたのは、自分の皮膚の問題、そして息子に肝炎の予防接種を受けさせたいと相談してきた日の2 度目の電話の時でした。すでにおなじみさんといった感じのあるこの女性は、1~2年ごとに集中して相談してくるのです。その度にぽろぽろといろいろな事についての情報を求めてくるのですが、一番訊きたい事について話を始めるのは決まって、いくつかの情報を提供してからなのです。そして本当に相談したい内容をきき逃さないように、必死に対応するのです。

 今回最後に相談されたのは18才になる息子の身長が150センチと低いため、成長ホルモンをつかった治療を受けたいというものでした。今まで検査は受けた事がないので、ホルモン異常があるかのどうかわからないが、身長を伸ばしてやれるのであれば治療を受けさせたいというのです。息子は、数年前に日本に呼寄せられた時から国保に加入していないのですが、ホルモン治療が有効と分かれば、加入させたいとのことでした。

 成長ホルモン分泌不全低身長症、ターナー症候群、軟骨無形成症、慢性腎不全による低身長等は、児童福祉法に基づく小児慢性特定疾患治療研究事業により公費補助を受ける事ができます。公費補助を受けると、前年の所得税課税年額等に応じて、外来であれば 1 回あるいは同一月に同じ医療機関にかかった場合、最高5750円の負担ですみます。18才未満までの子どもに対する補助ではありますが、引き続き治療が必要と認められた場合には20才到達まで延長することが認められています。ただし公費補助を受けるには、いくつもの条件をクリアしなければなりません。低身長となった原因にもよりますが、初年度は身長が標準身長の-2.0SDから-3SD以下か、年間の成長率が2年以上に渡って-1.5SD以下がでなくてはなりません。SDというのは標準偏差のことで、ここでは子どもの身長のバラツキの程度を表しています。詳細な検査の結旺をもとに主治医を帳して成長科学協会に判定を仰ぎ、治療に適応ありと判定されて、ようやく公費補助を受ける事が出来るのです。治療の終了基準は、男子が156.4センチ、女子は145.4センチに達したときです。

 残念ながらこの男性の場合、治療対象となる可能性はあるものの、年齢から考えると公費補助を受ける事は難しいようでした。国保に加入すると月々窓口で支払うのは15万円から20万円で、自己負担限度額を超えて払った分については自治体に償還申請する事が出来ます。

 専門のクリニックを紹介し、まずは_液検査でホルモン値をはかり、手のレントゲンを取って骨が太くなる余地があるかどうかを調べ、成長ホルモン投与の効旺が認められれば、数年間の遡りの国保料と、月々7、8万円の治療費がかかることを伝えました。その間、息子は妊娠 8 ヶ月の早産で生まれ、自分は出_が多かったため十分な栄養を与えてやる事が出来なかった、低身長なのはそのせいなのだろうか、小さい頃から栄養によいものをいつも食べさせてきたと、いつものようにポツリポツリ話すお母さん。どのような結旺になろうと、日本での親子二人ぐらしが、前向きなものとなるようにと祈るばかりです。 (センター関西 I)◆◆◆

(AMDA国際医療情報センター NEWSLETTER NO.55より)


AMDA国際医療情報センターのホームページ

NEWSLETTER NO.55

ケース紹介目次

image お問い合わせはamdack@nifty.comまでお願いいたします。