予防接種の話 〜自分の意志、医師の判断〜


 みなさんは何種類の予防接種をご存じでしょうか。そして、実際に何種類の接種を受けたことがあるでしょうか。また乳幼児の予防接種以外に、海外へ渡航する際にも接種を受けましたか。もし受けたことがあるなら、どうして予防接種を受けるのか事前に考えてみましたか。私自身は、南米のある国で2年間ほど住むことになった時に、東京のとある診療所で渡航先や出発日を伝えて医師にスケジュールを立ててもらい、A型・B型肝炎や狂犬病、そして黄熱病など数種類の予防接種を受けました。接種した後で腕が赤く腫れたり、少し熱が出たり、渡航前の忙しさの中で結構大変だったことを覚えています。

 センター関西にも、アジアなど旅行するので予防接種を受けたいという相談が、夏休みや年末年始など長期休暇の前になると増えてきます。相談者の中には、どの予防接種を打ちたいのか決まっている方もいれば、医師に全てを相談したいという方もいます。また、出発日までかなり時間的余裕を持って相談してくる方もいれば、明日出発するので・・・とおっしゃる方もいます。この準備度合いの個人差は外国の方に限らず万国共通のことだと思いますが。今回は予防接種に関する様々な相談の中から、自国で受けた予防接種の追加分を日本で受けたいというケースをひとつご紹介したいと思います。

 ある日、スペイン語圏出身のご夫婦からセンター関西へ1本の電話が入りました。自国でB型肝炎の予防接種を2回受けてきたので、3回目を日本の医療機関で受けたいという相談でした。ただ、予防接種を受けた際に証明書は受け取っておらず、接種日と予防接種の種類が記入された領収書だけ手元にあるとのことでした。複数の医療機関に問い合わせをしたところ、いずれの医療機関からも(1)領収書等の記録を日本語訳したものを持参して欲しい、(2)あと何回接種するか等、必要なことは医師が判断する、(3)抗体検査を行うかもしれないという回答を頂き、それらを相談者にお伝えしました。後日、ご夫婦はセンター関西が紹介した医療機関の中の1軒へ予防接種を受けに行き、そこから電話通訳の依頼がありました。そこでのやりとりはこんな感じでした。

Dr.:「まず、すでにウィルスを持っているかどうかを調べる抗原検査と、抗体を持っているか調べる抗体検査を行います。」

相談者:「自国でB型肝炎の予防接種を受けたのは、この病気を予防するためでした。なのにどうして、自分たちがウィルスを持っているかどうか検査しなければならないのですか。」

Dr.:「今日、ウィルスを持っていないというデータを持ってきてくれていれば検査する必要はありませんでした。日本ではそのデータがないと予防接種はできません。これは1つのプロセスです。」

 ご夫婦は保険が適応されないことを了承した上で、抗原検査と抗体検査を受けました。そしてお二人そろって抗体検査の結果が陽性であったため、3回目の接種は必要ないと医師に判断され、予防接種を受ける方の中には2回の接種で抗体を持つ方もいるということ、そして抗体があるということはその病気に対する免疫がすでについているということなどの説明を受けました。しかし、この日のために仕事の都合をつけて病院へ行き、自費で検査を受けた上に予防接種を受ける必要がないと言われても、ご夫婦は納得がいかなかったようです。結局、すでに抗体をもっていることを理解した上で、3回目の接種を受けると彼らは決めました。

 今回のケースで電話通訳をしながら、医療機関へ行った時にルーチンの検査に疑問を抱かず、ついつい言われた通りに検査を受けてしまう自分を思い出しハッとなりました。私自身もB型肝炎の予防接種を受ける前に数千円もかかる抗体検査を受けていました。その頃は今のように医療に対して特別な関心をもっているわけではなかったので、「どうして検査が必要なのか・・・?」と前述のご夫婦のように医師に対して質問はしませんでした。日々の相談対応で適切でより良い情報提供や電話通訳を心がけていると、自然と自分自身の思わぬ行動に気づいたり、今後の参考になったりすることがあります。センターの業務を通して私自身も成長していけたらと思う今日この頃です。(センター関西K)◆◆◆

(AMDA国際医療情報センター NEWSLETTER NO.51より)


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