センターでの日々の対応の中で

 今回は、1月30日より相談を開始し、現在もなお、相談継続中の方(以下Aさんとする)のケースである。現在、Aさんの子どもは、生まれながらにして、5つの心臓病(両大血管右室起始症、重症僧房弁狭窄症、卵円孔開存症、左室低形成症、大動脈狭窄症)を患っている。Aさんの子どもは、左心房が全く機能していなく、右心房も100%うまく機能していないという状況であった。そのため、早急に手術が必要ということになり、2004年の1月に手術を行うことになった。

 医師の懸命な努力により、手術は、成功し術後の経過もよく、安定しているとのことであった。その後、Aさんには手術内容について説明しなければいけないのだが、Aさんは、日本語ができず、通訳を介して説明しなければ理解はできなかった。病院側も、母国語の話せる人がいないということでメディカルソーシャルワーカー(以下MSWとする)よりセンターに電話通訳依頼があった。  センターでは、今回の手術の経過説明、今後の状況の説明を忠実に通訳する。本人もその説明に納得し、医師に対してもとても感謝をしているということだった。MSWの話では、2月1日の入院から退院まではAさんの付き添いが必要ということもあり、その期間は定期的にお電話をしたいということであったのでこれを承諾。

 その間定期的に病院より電話があり、通訳等を行っていた。  ある日のことである。Aさんから相談があり、話を聞いてみると、最近、Aさんは毎日家で泣いているという。Aさんがいうには、医師と看護師の方たちにはとても感謝しているが、今回は、医療のことではなくビザのことが心配だという。本人は、母国の文字も理解していない状況で筆談も困難であり、そのためAさんは、自分のビザがどのようなものなのかも分からないでいた。MSWの方が確認したときには、既に、2003年12月に特定活動ビザ(1年)が更新されていた。

 のちにわかったことであるが、Aさんは、今から3年前、母国で結婚。結婚後相手の家族とともに来日することとなる。夫の両親は残留孤児ということもあり、その子どもは、定住者ビザを取得することができた。Aさんも定住者の妻ということで、定住者ビザ(1年以上)を取得していた。両親は、日本で今も生活している。夫妻は、上京後に仕事を始める。初めのうちは、とても、幸せな毎日を過ごしていたという。その幸せな日々が一転してしまったのは、Aさんの夫の突然の失踪が原因であった。失踪した理由は、分からないが未だ消息がつかめない状況である。それ故、Aさんはビザの更新について心配なのであった。

 本来は、失踪ということを入国管理局に説明し、結婚証明書、源泉徴収票等を提出すれば、定住者ビザの更新は、可能であった。しかし本人は既に夫が離婚届を提出していると思いこみ、そのことを入管に話したため離婚していることを前提に話が進んでしまったのである。実際は、離婚しているかどうか判明してはいない。今回は、子どもの病気が、母国では治療が不可能ということもあり、日本での治療が最善ということで、診断書を入管に提出し、特定活動ビザの発行の手続きをしてしまったのである。

 国により、法制度が異なるとは思うが、彼女の母国では日本と同様に一方的な離婚は成立せずに、日本で言う家庭裁判所というところで判断がなされる。例えAさんの夫が、勝手に離婚届を提出しても許可はされず、仮に夫自身が提出した場合は、文書偽造ということで罪に処されるのである。離婚が成立していないと確定した場合は、ただの別居中ということで法律的にはまだ夫婦ということになる。つまり、定住者ビザを獲得する可能性は0%というわけではないということになる。ただし、発行してしまったビザの書き換えは、今のビザの有効期間中はかなり難しいとの入国管理局の見解で、次回の更新手続きの時にもう一度考えてみてはどうかとのことだった。

 現在、このビザの件でAさんと病院のMSWの間で近日中にも入国管理局、某大使館を訪問する予定、とのことであった。 今回のケースは、子どもの手術の電話通訳依頼から始まり、ビザの更新、夫の失踪問題など、日々内容が変化している。センターではこの変化にも常に対応している。前文にも述べたように未だ継続中のケースである。AMDA国際医療情報センターとしては、今後も電話相談を継続していく予定である。(センター東京S)◆◆◆

(AMDA国際医療情報センター NEWSLETTER NO.49より)


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