DVと在日外国人

2001年10月に配偶者からの暴力防止・被害者保護法(以下DV防止法)が施行されてから1年余りたち、最高裁によると、2002年8月末までの保護命令の申立数は、支部を含む全国50地裁で1,023件(発令777件)にのぼる。この中にどれくらいの外国人が含まれているのかはわからないが、昨年12月に実施された移住(外国人)女性のための暴力・DV全国一斉ホットラインには計57件の相談があったと聞く。また、1996年9月から2002年12月までの間にセンター関西に入った夫の暴力に関する相談は14件で、相談者の国籍は9カ国に及ぶ。

まず、その中から2つのケースを紹介したい。最初のケースは夫の暴力に悩む日本人の妻からの相談で、暴力を振るう外国人の夫と一緒にカウンセリングに行きたいので日本語と外国語両方話せるカウンセラーを紹介して欲しいというものだった。「夫はすぐきれるタイプで、結婚前からきれると人に暴力を振るっていた。気に入らなかったら私にも暴力を振るう。それ以外の時は反省する。可哀想な生い立ちが影響していると思う。」と、妻は夫に寄り添う姿勢をみせていた。夫は母国語以外にもいくつかの言語を話すということであったが、残念ながら2人で受けたいという夫の希望を満たすカウンセラーは関西にはいなかったため、日本語と夫の母国語を話す別々のカウンセラーを紹介した。

2つ目のケースは病院の看護師さんを通じての相談で、「中国帰国者の娘さんが日本人と結婚して妊娠しているのだが、あまり日本語が話せない上、夫から暴力を受ける等問題が多い。病院のソーシャルワーカーがケアしているが、できれば中国での出産の習慣などを教えてもらって、よりよくケアできるようにしたい。そういったことが聞けるボランティアはいるか。」というものであった。たまたまセンターの中国語通訳が中国人で、自国で出産経験がある方なので、中国と日本の違いなどを説明してもらう事はできると伝えたが、結局本人からの電話はかかってこなかった。

この他、夫から妻への暴力ではないが、娘達の件で母親から相談されたケースもある。2才と4才の娘がセクハラを受けたというのだ。誰かが娘たちに性的な虐待を加えた。「2ヶ月前のことなのだが、医師に診てもらったほうが良いのだろうか。誰がやったかはわかっている。」というので詳しい話を聞いていたが、センター関西では残念ながらこのお母さんの母国語で相談対応をしていないため日本語と英語で双方必死にやりとりした。しかし「○○○語でないと上手く説明できない。○○○語がわかる人はいないか。」というので、大阪でこの言語で対応しているNPOと、センター東京を紹介した。「誰がやったかはわかっている。」ということは、やった人間を既に罰した上での発言とは思えない。

当センターは医療情報の提供が主な活動内容であるため、DVや児童虐待の被害者や加害者を直接援助する事はできない。しかし、暴力が原因の怪我や精神症状のため、医療機関を受診したいと希望する時、密室で行われてきたことを最初に知るのは私達になるかもしれない。わずかな信号もキャッチし、専門機関につなげることにより、暴力を絶つ手助けができればと思う。そして言葉や、文化の違いといった外国人被害者、加害者に特有な問題に対応できる、医療機関、カウンセラー、弁護士が増え、一般の方々の理解が得られ、1日も早く双方が普通に生活できる日が来ることを願っている。◆◆◆(センター関西事務局I)

(AMDA国際医療情報センター NEWSLETTER NO.43より)


AMDA国際医療情報センターのホームページ

NEWSLETTER NO.43

ケース紹介目次

image お問い合わせはamdack@nifty.comまでお願いいたします。