やめられないダイエット

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 Aさんという女性から通訳を依頼する電話が何度かあった。最初の依頼は「1週間前から頭痛、吐き気がある。吐き気は1日中するが何も出ない。胃腸炎ではないかと思う。国にいたころ食欲は普通だったが、日本に来てからずっと過剰に食欲があった。ストレスのせい。病院に来ているが言葉が通じないので通訳して欲しい」というものだった。何度か電話通訳をし、それ以外にもやりとりするうちに、体の不調は全く何も食べずに厚着をして2時間エクササイズをするというような生活をしばらく続けていたせいだとわかった。5年前に55キロから45キロに落としキープしてきた体重が、この6ヶ月で4キロ増えたらしい。心配事があるとすごく食べたくなるせいだという。55キロに戻るのではないかと不安に思いダイエットを始めたというのだが、血液検査の結果、脱水状態だったり、過度に運動すると出てくるCPK値が高いということでしばらくエクササイズはおあずけとなった。しかし2週間程してCPK値が下がってきたとたん、医師にエクササイズを再開してもよいかどうか聞いてほしいと言い出した。「きちんと食べて、“適度な量”なら運動しても良い」という医師の返事に、お腹の肉が取りたいと浮かれた様子の相談者。その数分前には「体がだるく、左胸が痛む。また足の裏が夜焼けるように熱い」と言っていたのに・・・。

 さらに、“適度な量”の運動とはどのようなものだろうと訊かれたので、センター発行のストレスマネージメントハンドブックを参考にして、「朝夕近所を散歩してはどうか。景色が楽しめるし、顔見知りができ話し相手になってくれるかもしれない。低温のお風呂に入る。友人とマッサージをし合う。栄養の取り方も・・・・」と言いかけたが、相談者は聞いてはくれなかった。ストレスが原因で過食になるなら、まずストレスをなくすことを考えてみてはどうかとアドバイスしたのに、アブドロニクスを買ったとか、友人から“カツラ”という薬を送ってもらったが、すごく尿が出てめまいがした、鮫のエキスのこと等々、直接的で安易なダイエットしか頭に無い様子であった。その後も日本語を習いたい、弟に送った薬について知りたい、耳鼻科に行きたい等々しばらく相談があったのだが、最近はかけてきていない。

 ダイエットのし過ぎで体調を崩したにもかかわらず、尚もダイエットにこだわる理由は何だったのだろうか。彼女は前に相談したことや、回答を聞くための再電話をすることを忘れ、同じ事を尋ねる為に電話をしてきたことがあった。あるいは同じ事をあちらこちらに相談していて、誰に何を聞いたのかわからなくなってしまっていたのかもしれない。他愛無い内容の相談もあった。それは誰かと話すための電話だったのだろう か。「同僚の他国出身者たちは留学生として日本に来ていたため日本語を話すのがとてもうまい。」「教師になるために大学に5年行った。」「日本では腹を割って話す相手がいない」等々。この方に限らず、相談者の方が本当に向き合うべき問題が何であるかを認識する手助けとなるよう、話された内容の中に散らばっているキーワードを拾い集めていけたらと思う。◆◆◆センター関西事務局I

(AMDA国際医療情報センター NEWSLETTER NO.41より)


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