ケース紹介

 

〜 資格があっても保険に加入できない人たち 〜

 

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 前号のケース紹介で、「外国人と保険加入」について取り上げました。今回は、保険に加入したくても加入できないケースについて少し具体的に紹介したいと思います。

 日本に10年近く住んでいるこの外国人夫婦は、派遣会社を通してある工場でずっと働いていますが、日本の公的保険に入っていません。彼らは是非、会社の健康保険(以下、社保)に加入させてほしいと、派遣会社の社長に何度も頼んでいるのに頑として聞き入れてくれないとのこと。この派遣会社に勤める日本人社員は保険に加入させてもらっています。この夫婦は在留資格もちゃんと取っているし何の問題もないはずなのに、外国人はしばらく帰国して、また日本にもどって仕事をするというように、出たり入ったりするので加入させられないと言われたそうです。彼らには高校生になる子どもがいて、以前大きなけがをしました。そのときも保険に入っていなかったので、高額の医療費を一度に払えず、今も返済し続けているそうです。

 法人格を持つ事業所は社保適用になりますし、法人格がなくても常時従業員を一人以上雇用していて任意で社保適用の事業所となっているところもあります。社会保険事務所は、そのような事業所に勤めていて保険に加入させてもらえないのであれば、指導すると言っています。image
このケースでは、彼らが働く派遣会社では日本人社員が社保に入っているのだから、明らかに社保適用の事務所なので、指導の対象となります。しかし、社会保険事務所から指導がいったとしても、派遣会社の社長が素直に応じてくれればいいですが、逆にクビにしてしまうかもしれません。現在の不況の中、突然解雇を言い渡されて帰国していく友人も結構いるらしく、保険を持ちたい気持ちは強くても彼らにとって状況は不利です。

 ずっと働いている工場での仕事は厳しいようでしたが、人間関係がうまくいっているので彼らはその職場を気に入っているようでした。ならば派遣会社を通さず、工場に直接雇用してもらった方がいいような気がします。しかし、雇用に伴う様々な経費や書類の処理は工場にとって大きな負担となる一方、働いている彼らにとってもその工場がつぶれたらたちまち失業となってしまうリスクを負います。

 実は彼らの支援者が、会社での社保加入がだめなら国民健康保険(以下、国保)に入れるだろうと役所で手続きをしようとしたところ、係の人に「そういう外国人は多いが国保には入れないと上から言われている」と断られました。「会社に責任があるので会社と交渉すべき」の一点張りだったそうです。「上」とは誰なのか教えてくれたら、そこに事情をよく説明して加入できるようお願いしたいと支援者が言っても、image
「前例がないからだめ」「上がどこかは言えない」等の返事ばかりで、結局あきらめて帰ってきたそうです。せめて子どもだけでも国保に加入させられないだろうかと、後でこちらに相談がありました。しかし、被扶養家族を扶養者と切り離して単独で国保に加入させることはできません。

 外国人労働者、派遣会社、工場のそれぞれが寄りかかり合った状況は、このケースに限らずたくさんあります。外国人労働者がいなくては、工場だって派遣会社の社長だって困るはずなのに、弱い立場にある外国人労働者にしわ寄せがいくのはどこか納得がいきません。しかも労働者の家族まで、社会保障の枠外におかれてしまっています。しかしこの夫婦とは違って、中には資格はあるのに健康だから保険なんかいらないと言う外国人たちもいて、会社ばかりを責められない部分もあります。

 彼らの支援者は、この夫婦が今どうしたいかをもう一度確認したうえで、社会保険事務所に相談するなり、再度社長にかけあうなりしていくつもりだとおっしゃっていました。◆◆◆ (センター関西)

(AMDA国際医療情報センター NEWSLETTER NO.37より)


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