AMDA国際医療情報センター
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小林米幸: AMDA国際医療情報センター理事長

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平成23年8月13日土曜

平成23年8月13日土曜

きのうはなんだか難しいことを書いてしまった。でもきっと僕がこういう活動をしている背景をわかっていただけたにちがいない。バンコックにいると心が落ち着く。日本にいるといつもだれかに追われているような気がして休まらない。「追われている」というより仕事などの件で「いつでも連絡をとれるような体制にしておかねばならないという強迫観念にとらわれている」というべきだろう。バンコックにいるときは携帯電話は二つ持っている。ひとつはタイ専用の携帯、もうひとつはいつも日本で使っている携帯だ。タイ専用の携帯電話機は中のシムカードを入れ替えるとフィリピンでもどこでも使え、持っていると便利だ。それに安い。ただフィリピンは携帯電話の料金が高く、みな電話で話さずにテキストメールという文字数が限定された安いメールでやりとりしているが。日本で使っているいつもの携帯電話を使うメリットは僕にはまったくない、何しろ海外ローミングは値段がばか高い。ただし僕を探している人にとっては便利、この上ない。地球のはてまで逃げてもピツポッパンですぐにつかまえられる。朝早く起きていつも泊まっているコンドミニアムの24階の部屋の大きな窓から日の昇り始めたバンコックを見渡すとなぜかほっとする。
本当はきのう書いたような理由がなければ貿易会社に入って海外で働くというのが夢だった。
きのう、おもしろいものを見た。病院の帰り、久しぶりにBTSのサイアム駅で降りて隣のナショナル スタジアム駅にくっついた東急までサイアムスクゥエアという地域を歩いてみた。あのあたり、学生の多い繁華街なのだが、物乞いのメッカでもあるらしい。たまたまきのうは母の日とやらでタイは休日、すごい人出だったが、数メートルおきに物乞いの人がいる。膝から下がない人、目の見えない人、ルークトゥンやモーラムを歌う人、ソーを演奏する人、こども・・・次に目に入ったのが犬だ。四角い座布団かなにかの上に器用に犬が横になって寝ている。そしてその前にお金を入れてもらうためのコップがおいてある。好奇心で近づいていっても犬は身じろぎもせずに寝ている。あまりの光景に近接で写真を撮ったがそれでも犬は起きない。そしてコップを見るとなんと人間のベテランの物貰いの前に置かれたコップの中身よりはるかに多いコインが入っている。さらによく見るとすぐ近くにこぎれいな黒のバックが置いてある。どこかで見張っているこの犬の主人は相当に頭のいい奴にちがいない。なんだか見ていて楽しくなった。
 そうそう、忘れないうちに書いておきたい。2週間ほど前、卵巣嚢腫だというカンボジア人の若い女性から電話があったことは以前に書いたけどあの続きだ。まだ26歳の未婚の女性に開腹手術を勧めるとは某病院の担当医はいったいどういう了見だったのだろう? 内視鏡手術なら某大学病院を紹介するが、そこでは2年待ちと言われたという。この子はタイのサケオだったかカオイダンだったか忘れたが、難民キャンプで生まれた子だが、生後すぐに一家で日本に受け入れられてやってきただめ、肌の色こそ浅黒いが日本語は母国語同様だ。だから日本語がわからないのでこうなっちゃったということではない。しかも現在医療関係の仕事についていて少なくても一般の普通の人よりは医学用語などについてよく知っている。卵巣嚢腫はチョコレートのう胞と言われたというので、これが事実なら良性腫瘍ということになる。たしかチョコレートのう胞というのは卵巣に発生した子宮内膜症だと記憶している。生理のたびに卵巣にある子宮内膜でも出血が起こり、それがたまったのがチョコレートのう胞のはずだ。開腹手術すると麻酔などにより、特殊体質でもあれば命の危険に陥ることもないわけではない。麻酔剤による肝機能障害だってある。さらに腹膜と臓器の癒着による癒着性の腸閉塞はずっと後までいつ発生してもおかしくはないし、何より美容上の問題が残る。だからこそ僕ら、外科医は「薬で治るものはまずは薬で。外科学的治療は最後の手段です」と厳しく教えられ、メスを握るのは最後の手段と訓練されてきた。今回、手術のための入院の予約をしなければいけないというところまで追い込まれて彼女が僕にSOSを発してきたのは当の本人も本当にこれでいいのだろうかと不安に思ったからにちがいない。なかなか賢い子だ。なにしろ両親の病気も来日以来24年間、僕が診ているし、いつも本人が言うとおり、僕は彼女にとって日本人の父親のような存在なので電話しやすかったのだろう。僕はすぐに近くで開業している信頼できる婦人科の専門医に相談してみた。すると「腹からのう胞を刺して吸引することもできるしさぁ、でなんで開腹するの?」と逆に質問されてしまった。チョコレートのう胞は多胞性のこともあり、吸いきれないときもあるけどさ・・と言いながらも彼は穿刺をしてくれた。すぐに彼女から電話があって「先生、350CCも抜けました。おなかの痛みもなくなってよかったあ」と話してくれた。そりゃ10センチ×10センチのしこりがなくなればおなかも中も楽だろう。けっきょく若い女性医師に開腹手術を勧められるまま、入院直前まで行った理由がやっぱりわからない。患者であるこのカンボジア人女性にもわからない、担当医に何か言われたが理解できなかったと言っていた。わからないからこそ僕に連絡してきたのだろうが・・まさかとは思うが若い医師が経験のために開腹手術してみたかった・・なんてことは絶対にないと思いたい。
  • 2011/8/13 10:00
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