AMDA国際医療情報センター
ブログ カレンダー
« « 2017 11月 » »
29 30 31 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 1 2
プロフィール

小林米幸: AMDA国際医療情報センター理事長

続きを読む
supporter
login

平成23年6月20日月曜

平成23年6月20日月曜

金曜のセンター東京への相談に2つも3つも問題を抱えた相談があった。フィリピン人女性、オーバースティで妊娠8~9ヶ月、一回も病院に行ったことがなく、お金がないがどうしたらいいかという内容。重い相談だ。最大の問題は臨月が近いというのに病院に行ったことがないという事実だろう。産婦人科医としてはこういう人のお産は受け入れ難いにちがいない。当然だろう、そうでなくても産婦人科は一番訴訟が多いというのに妊娠中の経過がまったくわからない初診の患者のお産を引き受けるなんて専門医が聞いたら無謀に近いと言うだろう。それでもだれかが引き受けないといけないのだから良心的な産婦人科医ほど追い込まれることになる。おまけに今の日本はお産難民が出るような状況。そこに割り込むわけだから、本人が気をつけてくれたら回避できるリスクでありトラブルであるだけにたまらない。椅子のひとつも蹴飛ばしたくなるかもしれない。出産まじかまで産婦人科を受診しないというのは彼女だけではない。東南アジア出身者でもでも南米出身者でもこういう「困った」人たちは少なからずいる。妊娠を病気とは考えないからだ。たしかに妊娠は病気じゃないが母体も胎児も妊娠中は経過をみることが必要だ。妊娠中毒症とか早期胎盤剥離など危険はどこにでもころがっているから。日本の周産期死亡率が低いのもこういう母体と胎児の定期検診が徹底されていることによる。お産に限らないが適切な医療を受けるため、健康な生活を送るための啓蒙活動こそ地域の中で本来は行政が主導して行うべきことだ。大和市医師会ではすでに3年前から外国人医療対策委員会をつくり、このような啓蒙活動を通訳付きに言語別に行っている。行政の対策を待っていてはらちがあかないからだ。それにしてもお金はどうするのだろう? お金がないとのことだが、出産に伴う費用は40万はかかるだろう。けっきょくはオーバースティの状態で日本にいることが彼女にとっても彼女の周囲にとってもどうなのか?というところにつながってくる。今回、もしなんとか乗り切ったとしても日本でこどもを育てるとしたら病気になったらどうするのだろう? オーバースティで公的保険に加入できなければ乳児医療制度も使えない。生活に不安定要素が常につきまとう。日本人の配偶者のこどもを妊娠しているなら特別在留許可を得られる方法がないわけではないが、このケースはちがうと思われる。近年、オーバースティになっている人たちの摘発の強化により、たしかにこういった身分の人たちは減っている。しかしもうひとつ減少している理由に黒社会がからんだ偽装結婚があるからだということも聞く。摘発を恐れて「そういう」組織の仲介で高額な「お礼」を支払って偽装結婚するということだが、こんなことをしてもいずれ在留資格の更新の時にプロが見ればばれてしまう。悲しい現実であるが、このあたり、医療の現場ではいかんともしがたい。切なる願いは政治のひずみに医療を巻き込まないでほしいということだ。
  • 2011/6/20 9:04
  • トラックバック (0)
  • 閲覧 (1840)

トラックバック