AMDA国際医療情報センター
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小林米幸: AMDA国際医療情報センター理事長

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平成29年10月7日土曜

平成29年10月7日土曜

ひさしぶりにゆったりとした診察を楽しむようにすごしていた午前の終わりごろ、受付からアメリカ人の女性がやってきて、「今は6千円しか手持ちがないが、ドクターと話したい」と言っていると教えてくれた。こういう話は診察の順番までにフィリピン人スタッフに概要を聞いておいてくれと頼んでもおおよそ無駄だ。患者は医師と話をしたいと訴えているわけであって、ほかの人がどうしたのですか?と訊ねても、相手にしてくれないことが多い。いやな予感がしたが、とりあえず順番になったら入ってもらうので待ってほしいと伝えた。この間に内視鏡検査を行い、結局12時直前になって彼女の順番となった。座るなり薬の箱を取り出しながら、話し始めた。韓国に2年住んでいて、7月に米軍基地の中に住む妹に会うために日本にやってきて近くの市に住んでいること、そして韓国に住んでいるときにもらっていた薬と同じものが欲しいと。薬の箱のタイトルの英文字はどうやら韓国で売られている薬の名前のようで、おまけに錠剤が包まれている包装にはハングルしか書いてない。薬の説明書は?と尋ねると、ごめんなさい、捨てちゃったわという返事。ああ、薬を調べることから始めないといけないのねと目の前の残りのカルテの束を見て、気が重くなった。すぐにわかったのはテルミサルタン、もうひとつはスマホで調べて、β―ブロッカーとわかったが、日本では未発売の薬、そしてもうひとつはネキシウムだった。どうしてこれらの薬を飲んでいるのですか?と訊ねてもはっきりしなかったが、「二つは降圧剤ですよね」「そうそう、血圧が高いの」「胸やけするのですか?」「ええ、このあたりがね」と言うではないか。高血圧と逆流性食道炎にちがいない。βブロッカーについては同じものが日本では発売になっていないので、ビソプロロールでもいいですか?と訊ねると、「いいですよ」という返事。やれこれで終わったかと思った僕は甘かった。あとひとつね、ドクターと言って服を下げて左の臀部を見せてくれた。そこには小さなテープが張ってあった。「膝や腰が痛くてこれを3日に一回貼っているの、同じものが欲しいわ」と言われたのはフェンタニールのテープ。鎮痛剤とはすぐにわかったが、ここから僕の間抜けぶりがさく裂してしまった。日本ではフェンタニール等の麻薬系鎮痛剤は麻薬の使用許可ライセンスを持っている医師しか処方することはできない。僕も以前には持っていたが、麻薬の管理が面倒で大変で、更新手続きをせずに、今は持っていないのだ。がん性疼痛などに使うのだが、彼女の場合、保険診療ではないので使うことは保険診療上の査定の対象にはならないととっさに判断して処方箋に書いてしまった。彼女がうれしそうに帰ってしばらくして、彼女の家の近くの調剤薬局から電話があり、指摘されて、おおそうだったと気がついた。調剤薬局では英語が話せないということで電話で患者と直接、話してくれと言われて、話すはめに。ではフェンタニール テープはどうしたらいいの?と聞くので、彼女の居住地の総合病院を案内した。あそこなら麻薬使用許可を持った医師がいるはずだと。そして2時間後、再び、彼女から電話があった。フィリピン人スタッフが発熱して午後から帰宅していたので、受付から英語でまくしたてているけど、先生聞いてくださいと。電話を代ると彼女だった。その総合病院に行ってみたら、ちんぷんかんぷんで話がかみ合わないと。どこに行ったらいいか?と再び問われた。ここではっと気がついた。僕のクリニックのすぐ近くにペイン クリニックがある。そこの先生なら麻酔使用許可証を持っているはず。電話をして先生と話してみると、フェンタニールも使っているとのことだった。よかった。彼女にはこのペインクリニックのことをすでに伝えていて、火曜日に僕のところに来てくれるようにすでに話しておいたので、火曜日に英語しかわからない患者をご紹介してもいいですか?と訊ねると日常会話程度の英語ならいいですよと言ってくれた。昼前に「ドクターと話したい」から始まってようやくめどがついたので夕方。こんなケースも数か月に一人程度はいる。疲れ切った一日。
  • 2017/10/7 9:00
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