AMDA国際医療情報センター
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小林米幸: AMDA国際医療情報センター理事長

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平成23年10月27日木曜

平成23年10月27日木曜

きょうは外国人医療と関係がないことを書きたい。一昨日保健福祉事務所の幹部が医師会を訪ねてきた。県知事黒岩氏の鶴の一声で神奈川県ではポリオの不活化ワクチンを輸入して接種しようとしている、その事業の説明である。みなさんもご存じのように現在の生ワクチンでは一定の割合で副作用が出ることがわかっている。もちろん不活化ワクチンだってすべての面で生ワクチンに勝っているわけじゃないが、安全性からみる限りは不活化ワクチンに軍配があがる。国も平成25年末には不活化ワクチンを導入すると言っているが、そのためかこの1年、ポリオ生ワクチンの接種者数は大きく減少している。たぶん家族がその先の不活化ワクチンへの切り替えを待っているのだろうが、中国では自然界のポリオの散発的流行が認められ、こういう流行が日本に入ってきたら未接種者はたちまち感染してしまうだろう。憂うべきことである。そういうバックグラウンドから見ると黒岩知事の判断も一見英断と映ることだろう。だが僕はその逆、理解も評価もできない。こういう新事業を開始する場合はそれに伴う周辺の因子を整理しておかねば開始はできない。今回のポリオの不活化ワクチン接種についてはまず個人輸入をしなくてはならない。神奈川県として輸入することはできないということだから、具体的には神奈川県立病院など県組織内部の医師の名前で個人輸入するのだろう。現在でも個人輸入して家族の了解のもとに接種している医師はいる。渋谷区で開業している大学の1年先輩もこのようなことを行っている。その場合はすべての合併症、副作用についてはこの医師が責任を取ることになる。では今回の場合はどうなのだろう? 業務命令で「個人輸入」した医師がすべての責任をとらされるとしたらたまらない。おまけに現在の生ワクチン接種については不具合が生じた場合は国の補償制度がある。だからこそ医師も安心して接種できるわけだが・・今回は神奈川県独自の事業であるので国の補償制度が適用されない。接種する医師も接種される被接種者もその家族も大きなリスクを抱えての事業となる。ロープがしっかりしているのか切れているのかわからない、そのロープを頼りにバンジージャンプをするようなものだ。最後にこの事業は公平な事業ではない。なぜなら輸入量が定まらないので不活化ワクチン接種の人数については予約制で定員があるのである。公が施行する事業というものはすべからく住民に公平に利益をもたらさねばならない。希望して申し出ても早い者勝ちで「すでに定員に達しましたのでお断りします」と言われた家族の心中はいかばかりだろう。だからこそ上に書き連ねてきたことを十分に検討、用意してから新事業を進めなければならない。この数日テレビのニュース番組を見ているとポリオの生ワクチンと不活化ワクチンの特徴を比較し、国の事業の遅さを責め、黒岩知事の行動を英断とする論調が多い。確かに国の事業の遅さは責められるべきだが、もっとよく調査してからコメントしてほしい。そうでないと同じマミコミ出身の黒岩知事に対して「身内に甘いのね」ということになってしまう。」業務命令で接種を行わざるをえない小児科医には心から同情する。県内の保健所や県立病院で接種するというような話なので、もしそんなことになったらそうでなくてもパンクしそうなほど仕事を抱え、当直もしているのに、新たな仕事で保健所にも派遣されるとなると通常業務にも支障が出ることだろう。僕は決して守旧派ではなく、むしろ郡市医師会長としては異例のタイプと思うが、こういう黒岩知事の手法をご本人が「いいことはすぐに実行することがいい」と勘違いしているのではないか、そうすると別のことでも同じようなことを始めるのではないかと心配になるのである。
  • 2011/10/27 9:00
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