AMDA国際医療情報センター
ブログ カレンダー
« « 2015 12月 » »
29 30 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 1 2
プロフィール

小林米幸: AMDA国際医療情報センター理事長

続きを読む
supporter
login

平成27年12月7日月曜

平成27年12月7日月曜

カルテのとおり、カンボジア人の男性の名前を呼ぶとそれらしき男性と母親らしき年齢の女性が診察室に入ってきた。すぐに状況が理解できた。インドシナ難民として日本に合法的に受け入れられて暮らしているこの男性の母親がカンボジアから訪ねてきたのだろう。この男性が自分の診察券を出したということは自分の国民健康保険で診察してほしいということだろうと考えた。その通りだった。母親は3か月ビザでやってきてあと10日で帰国しなければならないが、1か月ほど前からひどい不眠だそうだ。まずこの男性の保険では診察できないことを伝えると、「だめですか」とがっかりしたようすだった。これはルールだからしかたがない。カンボジアでは不眠になったことはないそうだ。すると考えられることは息子と離れて帰国することへの不安、そしてもう一つは異文化の中で暮らすことのパニックだろう。後者と思われるケースは何度か診たことがある。もう30年以上前だが、台湾から息子夫婦を訪ねて来日した息子の母親がある日、挙動不審、言葉もおかしくなり、脳卒中かと息子たちは大騒ぎをしたが、台湾に帰国したら即普通に戻ってしまった。実はこれは僕の親友の話で僕自身、診察したのでよく覚えている。もう一つは2年ほど前、日本にいるパキスタン人の息子を訪ねて母親と父親がやってきて、母親が突然不眠とおかしなことを話すようになったと息子が僕のところに連れてきた。これも検査等の結果、異文化に投げ出されたためだろうと思い、帰国を勧めた。息子の話では帰国したらすぐによくなったそうだ。一番困るのは日本にいる家族がこういう親族を日本から帰したくない、日本で治療してほしいと考える場合だ。説得しても具合が悪いからビザを延長してでも治療してほしいと言う。このカンボジア人の母親もカンボジアの土を踏んだら、次の日からよく寝られるにちがいないと思った。こういうケース、実は外国人だけではない。日本人でもよくある。とくに都会に住む息子や娘にひきとられて高齢で単身やってくる人たちに多い。今まで自分が暮らしていた土地や友人から切り離されてしまい、アイデンティティがなくなるというか、居場所がなくなってしまうのだろう。医療ってむずかしいものだとつくづく思う。
  • 2015/12/7 9:00
  • トラックバック (0)
  • 閲覧 (564)

トラックバック

トラックバックpingアドレス http://amda-imic.com/modules/blog/tb.php/1157