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トップ  >  NO.92 医師と患者の間で

 昨年の春頃からほぼ毎月かかってくる地方の医療機関からの電話通訳依頼があります。定住者と思われる糖尿病の患者のための通訳です。血糖値とその他の血液検査、体重測定の数値をもとに、食事時間、食事の内容、量について医師が確認します。その結果、炭水化物をどれくらい減らすか、インスリンの量をどうするか、毎回指示が出ます。合わせて仕事の状態がどうなっているのか、起床時間や睡眠時間などについての質問もあり、担当医師が患者の日常生活にきめ細かく関心を持たれている様子が伝わってきます。


 ある日、体重が増える理由は何だと思うかと医師が患者に尋ねました。患者はもともと自分の標準体重が高めであったこと、病気になって数十kg減ったものの、体調が回復してくるとともに体重も戻ってきているのではないかと思っていると答え、医師も納得されたようでした。


その後、いったんインスリン注射を中止し、様子を見ていたのですが、血糖値、HbA1c値がともに悪化し、ご飯を減らしてインスリンなしで続けるのと、ご飯を減らさずにインスリンを再開するのとどちらがいいかという質問が医師からありました。仕事が見つかったが、力仕事なのでご飯を減らすことは難しいという患者の意向で、インスリンが再開されました。


 改めてインスリンの使い方について指示が出たのですが、仕事の都合で夕食が遅れるためか朝の血糖値が高くなり、患者が自己判断で朝にたくさん使うようになったことが数か月後に判明。ノートへ記載しているかどうかも毎回確認されるようになりました。食事の量も2合のご飯を何日で食べ終えるのか?何枚切りの食パンを何枚食べるのかなど詳しく確認されます。仕事に行く日と行かない日で朝食の内容が違うこともわかり、インスリンの量も区別して指示が出されました。ここまで細かく指示を出されたところで、体重が増えることは悪いことだと思うかと医師が尋ねました。それに対して患者は、先生の指示通りでは仕事をするのに力が入らない、体重が増えることが悪いこととは思っていないとのことでした。


 特に難しい医療用語が出てくるケースではありませんが、患者の日々の生活と切り離せない病気に医師がしっかり寄り添ってくださる姿勢に、いつも頭が下がります。だからこそ患者も正直な気持ちでお返事できるのでしょう。毎回電話通訳をしているのですが、こちらが耳にしていないエピソードもはさまれるので、患者は多少の日本語はできるのだと思います。それでもきちんと確認したいこと、伝えたいことがあるので電話通訳を使ってくださっているのだと思うと、私たちの背筋も伸びる思いです。


 別のケースでは、退院について医師の説明があるので通訳してほしいという電話があり、先生に電話をかわっていただいたところ、「退院」ではなく「転院」についての説明だったことがあります。日本語が少しできる、ということの怖さが凝縮したようなケースでしたが、幸い事情を理解してくださった医師が、そのまま退院まで治療を継続してくださることになり、胸をなでおろしました。センター東京 S

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