毎日の相談電話でどう対応すべきか気になる相談内容がいくつかある。その中で、ドメスティック・バイオレンス(DV)に関するケースが挙げられる。


 今年2月に参加した外国人DV被害者支援講座で、DVの概念についての説明を聞いてはっとした。DVと言えば、身体的に受ける暴力だけでなく、罵りや脅し等を通した精神的暴力、親類や友人から孤立させるような社会的暴力、そして、生活費を充分に与えない等の経済的暴力など、様々な形の暴力があることは以前から知っているつもりだった。しかし、被害者が外国人の場合、在留資格や公的制度に関する手続きに配偶者が協力しない、またはそういった手続きができないように阻止するというような形の社会的暴力も絡むことが多いということを私は考えたことがなかった。講演を聞きながら、数か月前に受けた相談電話の内容が記憶に甦った。


 「ここ数か月間、保険料を払うことが出来ず、滞納しているので心配」と言う外国人女性からの電話。区役所の担当窓口で相談するようにと勧めると、自分は国保の資格を失くしてしまうことが不安なのに、夫は構わず一切協力してくれないのだと打ち明けた。区役所で相談する際に電話通訳が必要ならばまたご連絡下さいと伝えたところ、そうすると言って電話が切れた。断定はできないが、あの電話をかけてきた女性は、もしかしたらDVに悩まされていたのかも知れない。


 また、つい最近、こんな相談があった。「中学生の娘が高熱を出しているので今すぐ入院施設のある病院へ連れて行きたい」。夕方5時を過ぎた時間帯で、多くの医療機関は既に診療時間を終了していた。救急疾患に値するのかどうか知るために病状の詳細を訊ねると、3日前に病院で診てもらい、しばらく安静にするようにと言われ、処方された薬もまだ使い切ってはいないとのこと。娘は日本語が話せるので日本語対応で構わないから今すぐ入院させて欲しいと焦っている。残念ながら、様々な病院の救急外来に問い合わせても重症ではないということで断られてしまう一方で、夜遅くまで診察しているクリニックを探すので少し遠い所になってしまうかも知れないと伝えると、その母親は「自分は電車に乗ったことがないので行き方が分からなくて困る」と言い、その上、「自分の母国でならすぐに入院させてもらえるのに、何故、日本の病院はそうしてくれないのか」と不満を露わにした。なるべく近いところで診察してもらえるクリニックを探している最中に通話が切れてしまい、再度かかってくることはとうとうなかった。相談をしてきたその母親と同じ国籍である当センターのスタッフから聞いた話では、日本で子育てまでを経験している外国人女性でも、配偶者から外出を禁じられ、長年住んでいるのに電車やバスの利用の仕方すら分からないというケースを何度か耳にしていると言う。もしや、あの時相談してきた母親は、DVで悩まされている家庭から娘と一緒に逃げようとしていたのではないかと想像してしまう。


 無論、DVの疑いがあるとこちらで一方的に決めつけて、「あなたはDVの被害に遭っているのですか?」と率直な質問でもすれば、もとから不安に悩まされている相手を更に恐縮させて逆効果を招いてしまうだろう。しかし、慎重に話に耳を傾け、相談者が間接的に示すサインを察し、本当に必要としているのは何かを知るための糸口を引き出せば、人権や女性相談の専門窓口を案内できるかも知れない。私たちの活動範囲内では問題を解消させることはできないとしても、適切な情報案内を通して解決への道標を提示できればと日々願う。(センター東京K