2020年に東京でオリンピックが開催されることに決まり、日本社会のおもてなしの心を発揮する絶好の機会がやってきます。観光で日本を訪れる外国人が増加すれば、海外の民間保険に加入されている方が日本の医療機関を受診するケースもますます増えてくることと思われます。公的保険に加入していない方でも日本の医療機関は受診を断ることはありません。会計窓口では自費で全額支払う必要がありますが、医療機関からの領収証と明細書を契約している保険会社に提出すれば、払い戻しを受けることができます。


海外の保険会社の顧客サービスも年々きめ細かくなってきているのでしょうか、患者さんの代わりに海外からセンターへ相談電話が入ってくるケースが増えてきました。具合の悪くなった顧客が受診できる医療機関を探してほしいというお電話なのですが、症状がよくわからなかったり、現在地が掴めなかったり、土地勘がないため医療機関の所在地を十分伝えられなかったりと案外苦労します。そこで、患者さんご自身からお電話を入れてもらいたいとお伝えするのですが、まずかかってきません。2回目もまた保険会社からかかってくるのです。このようなケースが何回かあり、顧客に直接電話するようには言えないのだなという事情がわかってきました。


保険会社からの依頼で医療機関との間の電話通訳をすることもあります。すでに患者さんが自費での支払いも終えて退院し、次の滞在地へ移動された後の通訳依頼は、医療機関から個人情報保護の理由でお断りされました。その保険会社と患者さんの関係自体を証明できない以上、当然の判断だと思います。


入院中の患者さんのケースでは、医療機関から電話通訳の許可はいただいたのですが、手続き上の問題を解決するために、何度も担当医からお話を伺う結果となりました。担当医が約束してくださった日時以外でのコンタクトや、FAXで送った書類の行方を捜してもらってほしいなどと次々懇願され、医療機関にご迷惑をかける結果になりかねない事態に次第に巻き込まれてしまいました。そして最後まで患者さんとお話する機会はありませんでした。


言葉の不自由な患者さんの受診をサポートすること、そのような患者さんを受け入れる医療機関でのトラブルを事前に回避することを目的として、私たちのセンターは活動を続けてきました。「困っている」と訴えられると何とかしてあげたいと考えてしまいます。しかし、上述のケースを振り返ってみると、NPOとしての活動範囲を超える領域にまで至っています。商業的サービスのお手伝いに手間暇をかけて、本当に困っている患者さんや医療機関からのご相談に手が回らなくなってしまっては、センターの設立理念から逸脱してしまいます。そもそも保険会社は医療機関情報を提供することも有料サービスの1つでしょうし、営利企業である以上、自らの責任と負担で通訳を用意すべきではないでしょうか。


 現在センターでは、保険会社からの医療機関情報提供・通訳依頼は基本的にお断りしています。(センター東京S