2009年9月末までにセンター関西に入った、角膜、皮膚、臓器などの移植に関する相談は全部で34件。「自国では無理と言われた移植を日本でなら受けられるのではないか」、「移植が必要と診断された自国にいる兄弟とHLAの型があったら帰国してドナーになりたいので、なんとか日本でHLAのタイプを調べられないか」、あるいは「40キロ減量したのであまった皮膚を寄付したい」等、具体的に移植を必要とされる方からの相談はあまりなかった。ところが去年より、透析治療を始めているあるいは数年後始める必要があると診断された方が、腎臓移植を受けたいと希望する相談が入り始めた。

Aさんは数年前から体調不良や経済的な不安を訴え、何度か相談をしてきていたが、今回は病院から電話通訳の依頼を受けた。医師は腎不全がゆっくり進行しているので、数年後透析が必要にあるが、それまでは食事制限、内服による治療を提案した。しかし、腎臓がもうよくなら見込みがないと聞くと、本人は透析治療ではなく移植を希望。医師によると、日本での腎移植は10年以上待つ必要があり、Aさんの国について領事館に問い合わせたところ、はっきりした情報はわからないが臓器売買は禁止されているため、欧米と同程度の約3年ではないかということであった。
最初のうち本人は「自国にはドナーはいくらでもいるので帰国して移植を受けたい。知人に頼む。」と帰国しての治療への意欲が高かったが、Aさんの医療保険では日本での治療しかカバーされないと説明を受けると、自国での治療はAさんの選択肢から消えた。日本にいるAさんの子供からは、いずれも病気や年齢の関係で腎臓は提供してもらえないとのことも明らかになった。医師に「日本では移植に年齢制限はないが、若い方が優先される。腎移植を受けても10年もつのは、よくて8割。20~30代の方からもらうと20年位もつこともあるが、あなたの年代の方なら10年もたない可能性もある。移植してもうまくつかないこともあり、再度透析が必要になることもある。Aさんは透析を嫌がっているが、日本では技術は進歩しており、透析をしてもすぐに死ぬ訳ではない。80代で元気に透析を受けている方もいるし、70代で受け始め、10年受けている人もいる。」とさらに説明を受け、その日の受診は終わった。この病院が移植施設ではなかったため、その後Aさんは腎移植が受けられる別の医療機関へ転院していった。

腎移植は1997年に臓器移植法が施行される以前から、生体移植、献移植が行われてきており、同法施行後の脳死移植を含め、年間千件あまりの移植が行われている。脳死を含めた献移植は2割程度で、ほとんどは親族間の生体腎移植とのこと。移植を受ける人がいるということはドナーになる人も出てくるということだ。

Bさんからは「生体肝移植のドナーになるため、明日腎採取術を受けるので、同意書の中身を知りたい」と依頼を受けた。当センターでは翻訳を受けていないが、その時の相談電話の数や、説明する内容があまり多くなければ、中身を口頭で伝えることはしている。採取術が明日に迫っている事もあり、予め送られてきたFaxを見て、依頼を了解した。中身を把握するため30分後時間をもらい入念に準備をした。大学病院で作成された同意書には当然リスクも書かれている。リスクをしっかり承知して頂く必要があるため、同じ内容が何度も出てきたが、1つも省くことなく時間をかけて説明した。Bさんは最後に、「よくわかった、ありがとう」と言って電話を切った。

AさんもBさんも、自国から遠く離れた国で命を賭けている。せめて最小限の不安となるよう、センターでは鋭意努力している。