インフルエンザA(H1N1)と名付けられた新しいインフルエンザの第1報が飛び込んできたのは、4月24日金曜日のことだった。いつか起こるのではないかと心配されていた事態がいよいよ始まったのかと危惧しながらも、どう対応するのか具体策が固まらないまま週末に入った。
 週が明けた4月26日の月曜日からさっそく、相談電話が鳴り始めた。センターでは理事長である小林国際クリニック院長の小林医師の指示のもと、体制を整えた。厚生労働省の医療体制に従い、38℃以上の発熱、咽頭痛、鼻水、咳、関節痛、下痢、腹痛などの症状を確認し、感染蔓延国に7日以内に滞在、旅行した方については管轄の発熱相談センターへつないで発熱外来を受診する必要があるかどうか判断をもらい、相談者に伝える、という方針で対応することになった。
 当初は各地の保健所や外国人従業員を多く抱える企業、日本語学校、ホテルなどから、「もし日本語の通じない人が新型インフルエンザに罹患したらどこへ相談したらいいか?」という問い合わせが寄せられてきた。センターでは「適切な機関におつなぎしますので、こちらで対応できる言語については、安心してお電話ください」と伝えた。
 中には在日大使館からの「うちの国民が日本で感染がわかった場合、治療してもらえるのか?」という問い合わせや、海外から「日本に行っても大丈夫か?」というような相談電話もあった。日本の安全性については厚生労働省や外務省の窓口にお答えしていただくしかないが、日本では外国人の患者を、外国人だからという理由で区別することはない。日本の保険に加入していない場合も、自費で診察を受けることができる。
 メキシコに続いて北米での感染者数は増加の一途をたどり、4月30日にはWHOがフェーズ5を宣言。センターでも5月7日から対応時間を延長し、土日祝日を含め毎日18:00まで対応することとなった(英語、中国語、韓国語、タイ語、スペイン語のみ時間延長)。その2日後には成田空港の検疫で国内初の感染者が確認され、その後関西地区を中心に拡大するに至り、相談電話も具体的に感染を心配する内容が増えた。
 幸い今回の新型インフルエンザは毒性が強くないことがわかり、かかってくる電話もパニック状態のものは一つもなかった。報道の過熱が指摘されていたが、情報が伝わることの重要性も見逃してはなるまい。
 個人からの相談電話では、「熱が高いが、渡航歴はない。一般の医療機関で診てもらえるだろうか?」というものが多かった。近所の医療機関に問い合わせると「発熱相談センターにまず相談してほしい」という返事や「インフルエンザの簡易キットがないので診られない」という答えがあり、医療機関側も当惑している様子がうかがわれた。
 感染蔓延国から帰国して日が浅く、38℃以上の熱があるというような相談も現れ、発熱相談センターから発熱外来への受診を指示されたケースや、濃厚接触者の健康観察を定期的に通訳したケースもあった。逆に「出社するために罹患していないことの証明書を出してくれるところを教えてほしい」という問い合わせも複数寄せられた。
 ヨーロッパや日本を含むアジアでの拡大を反映し、6月1日にはフェーズ6に引き上げられたが、日本国内に限っては感染者増加が落ち着いてきたため、センターへの相談電話も少なくなってきている。厚生労働省は今回の新型インフルエンザの病原性が低いことから、発熱外来を廃止し、重症患者の治療を重視する方針に切り替えた。南半球での感染拡大が報道される中、秋以降の第2波に備える日々である。
(センター東京 S)