電話での医療通訳
 現在在日外国人の数は200万人を超えています。日本の病院も外国人患者がどんどん増えてきています。言語、文化の相違のため、在日外国人の患者さんが病気に罹るとき、母国語が通じる病院を紹介して欲しいという希望が多く聞かれます。本人から片言での助けて欲しいという電話、外国にいる家族からの依頼電話、周りの知人、友人からの助けを求める電話、公的機関からの相談電話等、様々な人から色々な相談があります。そしてスムーズな回答を望んでいます。できるかぎり相談者のニーズに応じて紹介していますが、ただ、応じきれない時もあります。病院側の「医療通訳」サービスもまだ不充分です。そんな時、相談者、医療従事者、AMDAのスタッフ三者間の電話通訳が必要になってくるのです。

ケース1
 ある朝、センターの電話が鳴りました。日本人男性から通訳に来てもらえませんかとの依頼でした。そこでこちらは派遣はしていませんが、電話でなら無料で通訳していますと伝えました。相談の対象は来日5、6年の外国人女性で日本語はほとんどできません。小さい頃誤って母親の血圧の薬を飲んだため脳が普通の人より小さいそうですが、母国語での会話は特に問題ありませんでした。相談内容は国際結婚で来日後、生理がないため、ホルモンの注射をしてもらいたい、母国での事もドクターに伝えたいし、ホルモン治療の危険性なども聞きたいと言う事でした。そこで医療知識を勉強し又相談者の母国語での医療用語も調べておきました。診察の日、病院のドクターから問診の為の電話が入りました。日本に来てから生理は一度もなかった彼女は、母国でも生理不順でした。いつ最後に生理があったかも忘れていました。彼女は「生理が来てほしい。」「身体がよくなれば赤ちゃんも生みたい」「でも注射での治療は怖い」という事を訴えていました。彼女は病院に数回通ってCTの検査、染色体の検査、血圧、尿の検査などを受けその都度それを電話で通訳をしました。その日から五ヶ月経ちましたが、治療はまだまだ続いています。これからも通訳を続けていきたいと思います。

ケース2
 旅行で来日している外国人男性が滞在先のホテルで目眩で倒れ病院に付き添っているホテルのスタッフから通訳依頼の電話が入りました。先生は彼の母国での低血糖の病状や、倒れる前の様子も訊きたいと言う事でした。MRIの検査に15分程度かかり、暗い検査室の中で不安があれば手元のボタンを押して下さいと伝えたいとも話されました。幸い難しい医療用語が出てこなかったのでスムーズに通訳できました。

ケース3
 外国人妊婦さんの件で、ある病院の助産師さんから近日中に電話通訳をお願いしたいとの依頼が入りました。そして次の日の朝一番に病院から電話が入り朝方赤ちゃんが帝王切開で生まれたとのことでした。赤ちゃんは早産で体重は1100グラムで生まれたので、人工呼吸器を付けて保育器の中にいること、助産師さんは未熟児網膜症を発症する可能性があること、感染しやすいこと、アレルギーのことなど沢山注意することを両親に伝えたいということでした。また、母親はB型肝炎に感染している為、それに関する注意事項も多くありました。派遣通訳(有料)が一番良いのですが、今はまだ留学生で経済的に困難なので電話通訳をすることになりました。その後も何回か電話で通訳しました。3ヶ月後に赤ちゃんが退院し、家での注意点も通訳で伝えました。外国人として言葉が通じない国で生活するとき様々な苦労や困難があります。言葉が通じない中で病院の診察を受ける場面を想像してみて下さい。言われた事が理解できなければ自分が何の病気か分からないまま、不安な日々を過ごす事になります。そんな時AMDAは相談者にとっての「ライフライン」といっても過言ではないでしょう。

 AMDAの相談員として、相談者(患者)には全心全力を傾けたい。ただ通訳者に医療用語などの知識がないと、難しい場合があります。医療現場においては、相談者(患者)の症状を早く、正確に伝える必要があります。医療通訳は生命に関わる重要な役割であり、通訳者として適切で正しい医療知識を常に学び続ける事を心がけていきたいと感じています。(センター関西:M)