人権侵害?人種差別?

 今年2月に大阪府企画調整部人権室等から、平成14年4月から12月までの人権相談件数等に関する現状報告の依頼を受けた。日本に滞在または在住している外国人に医療情報を提供する当センターに、人権相談に関するものがあるのかと思ったが、様々な相談の背景や相談するに至る過程を見ると、人権侵害にあてはまると思われるケースが出てきた。

<ケース1>
ぺルー人からの相談。花粉症で仕事を休んだ後、仕事中の手の怪我のため手術を受け、その間また仕事を休まざるをえなかった。「不況だから仕方がない」という理由で、派遣先を首になった。手術後手の感覚がなくなり別の病院へも行ったが、初診後3、4ヶ月待つようにと言われた。自国と対応が違い、不満だ。

<ケース2>
コロンビア人女性からの相談。日本人夫との間にできた小学生の娘が、担任の先生から母親が外国人だからと差別を受けているので、学校をうつらせたい。市役所の支所に相談に行ったが、外国人だからバカにされているような気がした。担任の先生には、頼んでローマ字でメモのやりとりをしてもらっていたが、「時間がないし、もう辞書は使わない。紙も書かない」とほかの子供たちの前で言われ、娘は帰ってきて泣いていた。担任の先生は、校長先生と仲が良く、校長先生に相談できない。夫とは昨年2月に離婚したが、財産分与や養育費等のことを知らなかったため、夫からは何の援助もない。友人から教えてもらって現在生活保護をもらっている。

<ケース3>
ブラジル人女性から、きちんと検査をしてくれる産婦人科を探してほしいとの相談。娘は、生理痛がひどく、おりものがあるが、独身だからという理由できちんと検査してもらえない。

<ケース4>
ペルー人女性からの相談。病気で毎日のように通院しなければならないが、医療費が払えない。保険に入るにはどうしたらいいか。ペルーへは、夫の暴力から逃げてきているので帰れない。日本に子供がいるが、迷惑をかけたくない。

<ケース5>
フィリピン人女性から、シェルターを探してほしいとの相談。日本人の夫が暴力をふるうので、警察をよんだが、夫と警察官が笑いながら話しているのでこわくなり逃げて、今友人宅にいる。 ケース6. ブラジル人女性から娘のために精神科医を紹介してほしいとの相談。2年前から家出をしたりするようになり、帰ってくると怪我だらけで、彼や友達から暴行を受けた様子である。去年1年程ブラジルに帰国させたが問題を起こした。今年3月また来日したが学校へも行かない。一ヶ月前に手首をかみそりで切ろうとした。


 ケース3に関しては、このケースとは逆に、センター東京には、自国では普通されない内診をすぐされたというブラジル人高校生のケースがあった。

 これらは、あくまで相談者側のみの訴えであることを念頭に置かなければならないが、職場や、学校、病院、自宅などにおいていろいろな形で人権が侵害されている可能性はある。もちろん、日本人の中にも、さまざまな場所で人権侵害を受けている人がいると聞くが、外国人の場合、言葉の問題等のためにコミュニケーションがうまくいかず、また、いろいろな制度についての情報が十分得られず、より不利な立場に置かれることが多いのではないか。ケース1のペルー人も、業務上の負傷又は疾病のために休業する期間及びその後30日間は解雇されないことになっているので、派遣先を首にならずにすんだかもしれないし、ケース4のコロンビア人女性も制度のことを知っていれば、経済上の問題はなんとかなっていたかもしれない。

 この女性は、「日本には人種差別がある」と口にしている。離婚等の問題が重なったため、学校や役所の対応を差別ととらえてしまう精神状態におちいってしまっていただけかもしれないが、結果としてこんなことを口に出させてしまう、今の日本の状態を真剣にとらえなければならないと思う。 当センターは、人権侵害を受けた人に対し直接援助をすることはできないが、電話をかけてこられる人に誠意をもって対応し、専門機関を紹介することを通して少しでも相談者の負担が軽くなればと思う。(センター関西 事務局H)◆◆◆