出産育児一時金~海外で出産するときは・・・

 英語を話す男性から妻が本国に帰国して出産したため、出生証明書など必要書類を揃えて国民健康保険課に出産育児一時金の申請に行ったところ、支給してもらえなかったという相談が入った。理由は、母子が帰国しておらず、子供の外国人登録をしていないためだと言う。妻は昨年11月まで日本にいて、出産のため帰国していた。実は、この男性は妻が昨年帰国する前に当センターに電話をして、妻が本国で出産しても保険料を払い続けていれば出産育児一時金は支給されると説明を受けていたため、支給されないことに憤慨していた。それに加え、市役所に通訳を同行して何度も足を運んだにも関わらず、納得いく説明を聞くこともできなかったこと、また日本の保険のシステムへの不満や日本語を話せないために役所で見下されたように感じたことなど数回にわたり電話をしてきた。そこで、保険料が払われているのに、出産育児一時金が支給されない理由は何だったのか、外国人が多く住むS区と東京都福祉局市町村指導係に確認してみたところ、以下のような回答だった。

    外国人が海外で出産した場合、母親本人が出産育児一時金の申請をしてもらうようにしている。(S区)世帯主が申請もできるが、母親自身が日本にいるかどうかを確認するため。(福祉局)
    海外で出産するために出国する際、再入国許可を取得しないで出国した場合は、その時点で在留資格が無くなり、外国人登録も返還しなければならず、国民健康保険の加入資格を失う。そのため、保険料を払い続けていても、出産時には国民健康保険の加入者ではないため、出産育児一時金は支給されない。払いすぎた保険料は還付する。(S区・福祉局)
    出国する際、再入国許可を取得していても、許可期間を過ぎても再入国しなかった場合は、出国の時点に遡って在留資格がなくなるので、上記と同じ理由で出産育児一時金は支給されない。母親本人が申請するように言っている理由はここにある。世帯主に支給してしまって、母親が再入国許可期間に再入国しなかった場合は出産育児一時金を返還してもらわなければならないが、この作業が難しいため、母親本人の申請を要求している。(S区・福祉局)
    どうして外国人の出産育児一時金の支給に条件を付けているかというと、昨年偽の死産証明書を提出して出産育児一時金をだまし取っていた人が捕まったため。(福祉局)

 この相談者のケースでは、相談者本人が今年の3月に帰国予定であったため、妻は最初から出産後日本に戻る予定はなく、再入国許可も取得していなかったので保険料を払い続けていても支給は受けられなかったのである。

 センターでは、これまでも度々、同じように本国で出産しても出産育児一時金はもらえるかという相談を受けていたが、これからは保険料を払っているかどうかだけではなく、再入国許可を取得しているかどうかなどを確認しなければいけないことが分かった。ただ、3.の在留資格が再入国許可期間を過ぎて再入国しなかった場合に、出国時に遡って在留資格がなくなるという点については、法的根拠がなく、弁護士に確認したところ、再入国許可期間が切れた時点で在留資格が無くなると考える方が一般的な解釈らしい。そうなると、再入国期間が過ぎて再入国しなくても、許可期間内に出産していれば出産時には国民健康保険の加入者であり、返還の問題は生じないはずなので法的に争うことはできるとも言われた。また、外国人が多く住む東京都ではこのような対応をしているが、あまり外国人が多くない地域であれば、日本人と変わらず世帯主の申請で問題なく支給を受けられるのかもしれない。とにかく、出国前に各自治体の窓口に確認してから出国した方がよいと思われる。センターとしては、この例を教訓に通り一遍の回答ではなく、一つ一つの相談に丁寧に対応していかなければと改めて感じた。(センター東京 事務局K)