難病と診断されて

クリスマスの華やいだムードから一変した静かな朝、都内の病院のソーシャルワーカーから特殊疾病いわゆる難病(以下難病とする。)を患った外国人女性Aさんの件で、電話が入りました。Aさんは、国が指定する難病全身性エリテマトーデスを患い、その病院で通院治療を続けていました。今回入院加療が必要となり、100万円単位の費用が必要になるとのことですが、ビザが無く、医療保険も無いため支払いが困難になります。同国人のパートナーがいますが、その人もビザがありません。今までの治療費はパートナーに出してもらってましたが、「入院となると支払いきれない。どうしたら良いだろうか。」という相談でした。

これまでにも難病を患った外国人患者の医療費支払いに関する相談は度々ありました。その時問題になるのは、その本人が日本の公的健康保険に加入しているかどうかです。というのも、外国人であっても公的健康保険に加入していれば、国若しくは都道府県で指定されている難病を患っている場合、難病医療費助成(公費負担)制度を利用することができます。この制度上では、平成10年に制度の改正があり、一部指定された難病※1を患う患者を除き、入院・外来ともに一部自己負担がありますが、健康保険が適用される診療についてその医療費の健康保険の患者負担分が助成されるのです。つまり健康保険を持っていない場合は、この制度の対象とはならず、全額自費で支払うことになります。

そもそも難病とは、「患者数が少なく、原因不明で、治療方法がない、長期にわたって生活への支障があるなどの病気」と定義されています。ということは、たとえ対処療法であっても、長期に継続的な加療を必要とするわけで、その疾病のため働けず収入が思うように得られない場合、その医療費を支払っていくことが、切実な問題となっているケースも存在します。ましてや、自費で全額支払っていくのであれば、相当な負担があると容易に予想されます。

このAさんの場合、パートナーが働いているならその会社で健康保険に入れてもらい、本人も扶養家族として加入させてもらえないか相談してみてはどうかとアドバイスをしましたが、加入することが不可能であれば、他に使える制度がないため、自費で全額支払っていかなければならないのです。そしてこのようなケースは、Aさんに限ってではなく、度々私たちが遭遇するケースなのです。

制度改正に伴って・・・

 医療制度改革、年金見直しがしきりにさわがれる昨今ですが、この難病医療費助成(公費負担)制度も昨年改正が行われました。主な改正内容は以下の通りです。

国が指定する難病

●「プリオン病」が追加された。
●「クロイツフェルト・ヤコブ病」が「プリオン病」に統合された※2 。
●「ファブリー病」は「ライソゾーム病」に統合された。
●「ウィリス輪閉塞症」は「モヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症)」に名称が変更された。
●「ハンチントン舞踏病」は「ハンチントン病」に名称が変更された。

東京都が単独で指定する難病

●「原発性硬化性胆管炎」「肝内結石症」「自己免疫性肝炎」が追加された。
●「慢性肝炎」「肝硬変・ヘパトーム」が削除された。
→「慢性肝炎」「肝硬変・ヘパトーム」は、ほとんどが「B型・C型ウィルス肝炎 」で、今では難病の定義に当てはまらなくなっているため、「自己免疫性肝炎」などのウィルス性以外の肝疾患で難病の定義に当てはまるものを個別に難病医療費助成(公費負担)制度の対象とし、新たなウィルス肝炎総合対策として「B型・C型ウィルス肝炎入院医療費助成制度※3」を開始することとなった。(以上参考:東京都健康局ホームページより) 

 「慢性肝炎」「肝硬変・ヘパトーム」が都単独の難病指定から削除される直前の昨年の9月頃だったでしょうか、主訴ではなかったのですが、肝炎と診断されて主治医から制度が改正されるので、今のうちに取り急ぎ医療費助成の申請をするように言われているという外国人から相談を受けました。また、難病を患っているが治療費が高額なので何か援助してくれる制度がないだろうかと直接相談を持ちかけられることもあります。これらの場合、有効にサービス・制度に辿り着くことができるわけですが、診断時に同時に制度の説明を受けることができなかったり、貪欲に制度がないか探求しなかったりすれば、常日頃から医療や福祉から取り残されてしまいがちな難病患者、ましてや言葉の問題を抱える外国人難病患者はますます疎外される可能性を秘めているのです。知らないが故に不利益が生じないよう制度の説明をしていくことはもちろん大切なことですが、制度のあり方や知ってもらうためにできることは何なのか、今一度見つめ直していく必要があるのではないでしょうか。◆◆◆(センター東京事務局S)

※1スモン、劇症肝炎、重症急性膵炎、プリオン病、先天性血液凝固因子欠乏症等、人工透析を必要とする腎不全の患者及び重症認定された患者
※2クロイツフェルト・ヤコブ病は各種健康保険が適用される医療費の自己負担分が全額助成されており、引き続きプリオン病もその対象となっている。
※3 外来(通院)は対象とならないが、平成14年9月30日まで助成を受けていた一部の患者は、平成17年9月30日まではその医療費が一定額を超えて高額となった場合には、申請によって償還払いが受けられる。