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実父と法律上の父

 これまで3年間通訳相談員として相談にあたっていた方が、3月に母国に帰国した。その彼女が帰国前にしみじみと「3年前とはずいぶん相談内容が変わってきましたねぇ」とつぶやいていた。確かに外国語の通じる医療機関案内や病気についての相談も相変わらず多いが、年々相談内容が複雑化していることは確かである。

 記憶に新しい2件のケースがある。その2件のケースには共通点がある。それは、妊娠または出産した子供の実の父親は法律上の父親とは異なるという点である。これらは戸籍法関係の相談であり、当センターの専門とするところではないが、子供の出産が関係しているため相談が入ったと思われる。今回はこれらのケースを紹介したい。

<ケース1>
医療機関より、アジア人女性の件で。永住ビザを持つが、数週間前に日本人の夫と離婚。現在妊娠中で出産間近だが、お腹の子は別の日本人男性の子供とのこと。生まれてくる子供を実の父親の戸籍に入れるにはどうしたらよいか。回答:まず生まれてくる子供の日本国籍を取得するために、実の父親が役所で(胎児)認知届をする(認知:嫡出でない子に対して事実上の父または母が自分の子であることを確認し、法律上の親子関係を発生させる行為。戸籍法に基づく届出による)。しかし離婚後300日以内に出生した子供は、法律上、元夫の戸籍に入るため、認知届が不受理となる。この不受理を受理してもらうためには、出生後、家庭裁判所で裁判手続きを行う。この手続きは、「嫡出子否認調停申立」または「親子関係不存在確認申立」になるが、嫡出子否認調停は戸籍上の父親が申し立てるもので、親子関係不存在確認は、元夫の子供である可能性がない場合か元夫が嫡出子否認申立をしてくれない場合には、子供の母親が手続きをすることができる。この裁判手続きに関しては、家庭裁判所で詳しく相談にのってもらえる。


<ケース2>
医療機関より、フィリピン人女性の件で。夫は日本人だが現在別居中。フィリピン人男性との間に子供を出産。夫に配偶者ビザの更新に協力してもらえず、オーバーステイになった。子供の出生を届けなければならず、届けを出すと別居中の夫の子供になることを説明したが、母国に帰国すれば離婚もでき、子供の実父と再婚するので問題ないと言っている。果たしてそのように簡単に離婚できるのであろうか。回答:フィリピンでは「離婚」というものがないため、裁判所で婚姻無効の手続きをしなくてはならない。しかし、この手続きはとても複雑で時間もかかるので、日本の法律に則って、現夫ときちんと離婚をした方がよい。現夫との離婚が成立したら、離婚が記載された戸籍謄本などをフィリピン大使館へ提出することにより、離婚しているという証明書が発行され、再婚が可能になる。手続きに必要な書類など詳しくは大使館に問い合わせるとよい。


 話を進めるうちに、実はこの女性には夫との間に日本国籍を持つ子供がおり、彼女が養育していることがわかった。しかも将来は日本で暮らしたいという希望を持っているというのだ。日本国籍を持つ子供を養育しているのであれば、在留特別許可を受けられ、定住者としての在留資格を取得できるので、オーバーステイのまま帰国するより、在留資格を得てから帰国する方がよいと助言。この間に離婚手続き、夫の嫡出子否認調停申立(ケース1に同じ)をするとよい。

 これらのケースを複雑にしているのは、離婚後300日以内に出生した子供は、法律上、元夫の子供と見なされること、国によっては日本のように協議離婚が認められず、離婚の手続きが複雑で時間がかかること、配偶者ビザで滞在していた場合、離婚後、別の在留資格(定住者ビザなど)を得られないと、配偶者ビザが切れた時点でオーバーステイになってしまうこと、そして子供の国籍取得などの問題である。日本人同士でも離婚後300日以内に生まれた子供の戸籍に関する問題は同様にあるが(家庭裁判所の方も「このような相談は多いんですよ」と言っていたそうだ)、夫婦のうちのどちらかが外国人であると、さらに事が複雑になる。

 外国人の定住化が進むにつれ、今後このようなケースがますます増えることが予想される。当センターは医療情報が専門であるが、ケースが複雑になるに従い様々な分野の問題が混在してくるため、ある程度対応できるように準備をしておく必要があるだろう。また、それぞれの分野の専門機関、団体につなげることも重要な役割であると考える。 ◆◆◆(センター東京事務局N)
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