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共に子育て

 中南米出身のKさん一家が日本で生まれた娘と共に帰国した。自国に残してきた母親の持病が悪化したためだ。アパートを引き払っての帰国なので、もしかしたらもう日本には戻ってこないかもしれない。そして私たちの手元には、この娘さんの出産直前から帰国数時間前までの1年10ヶ月、35回に及ぶ相談の記録が残った。

 相談内容を見てみると、帝王切開になりそうだと電話通訳することから始まり、出産費用と保険についての説明、母乳の与え方、予防接種、便に関する不安、舌の根元にできた白いぶつぶつに関する不安、児童手当、赤ちゃんを自転車に乗せていてこけたが大丈夫かどうか、はいはいをしない、離乳食について、風邪をひいた等々で、毎回きめ細かい対応を求められた。ワンルームマンションで24時間赤ちゃんと過ごしているお母さんは、初めての赤ちゃんの一挙手一投足に気をもんでいた。母乳も、離乳食も子どもの望むときに子どものペースで与えていたため、お母さんは苦労していた。特に離乳食については、1回の食事に2時間から2時間半かかっており、「1回の食事が終わると次の食事の用意をしなければならなくなる。他に何もできない。」とこぼす。しかし、保健婦の「食べ始めて30分たてば食事を下げるようにすると、おなかがすくので次の食事は速く食べるようになる。2、3日で新しい習慣がつくと思う。」というアドバイスにも従うことはできなかった。短時間でも空腹にさせることはできないというのだ。動き始めたり、歩き始めると一時的に体重増加がとまったり、逆に減ったりするだけも大変心配していた。また、現代の日本の若いお母さんたちと同じで、量については自分で子どもの様子を見て適当に判断することができないらしく、ご飯は何匙やればよいのか、野菜は何グラムやればよいのか、うつ伏せは何分間させればよいのかなどなど、具体的に教えて欲しいと何度も言われた。

 1週おきに日勤と夜勤が交代するお父さんの勤務形態のため、夜勤の週の昼間はカーテンをひいた薄暗い部屋で過ごす。アパートの外の道は車がよく通り、地域の人口は少なく友達を作るのが難しい。今後も日本に住むなら日本語を習得する必要があるが、この環境ではそれも難しい。このような環境を心配した保健婦の口添えで保育所に通い始めることができた。しかし1ヶ月で帰国することになってしまった。

 帰国直前にお母さんがC型肝炎に感染している事がわかり、将来肝硬変や癌になるのも勿論心配だが、子どもや夫に感染しないかと気遣う電話が入った。帰国間近であったため、治療を受けるのは自国でか、日本に戻ってからかも決められないままであった。同時期、以前に風邪をひいたときに上がったことがある子どもの血中ケトン体値が再び上昇し、点滴を何本も打ってもらい、ようやく飛行機に乗れる状態となった。

 ほとんどの相談は、電話での通訳として関わった。その場その場で対応していたため見えていなかったが、今回相談全体を振り返ってみると子どもが成長していく様子がはっきりとわかった。病院、保健所、区役所、そして保育所とセンターが連携しあい、ネットワークを名乗って一堂に会したことはないけれど、共に子育てをサポートできたのではないかと思う。◆◆◆(センター関西事務局I)


(AMDA国際医療情報センター NEWSLETTER NO.38より)
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