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呼吸困難からの生還

 このケースは「タイ人エイズプロジェクト」として医療従事者を派遣し、通訳、受入機関との連絡や患者と同居していた人達へのアプローチなどを実施したものだが、患者はHIV感染者ではなく重症の結核患者であった。

 関東に住むタイ人女性(28歳)は、8年前に就労目的で日本に来た。日本人男性との間に子供ができたため仕事ができなくなり、7,8人の同国出身者と一緒に2部屋しかないアパートで何とか暮らしていた。この日本人男性とは既に別れてしまっており、1歳になる息子と一緒に生活していた。

 半年程前から体調が悪くなっていたが、お金が無いため病院には行かなかった。ついに症状が悪化し、さらに呼吸困難に陥り、知人が心配して病院に連れて行った。診断の結果は肺結核で、かなりの重症。このままでは命が危ない程だった。

 彼女にはお金が無かったが、結核予防法の適用を受けることができ、指定の病院に入院。治療費は公費で賄われた。しかし、生活費が無いため、入院中も周りの人々に助けられていた。1歳になった息子も肺結核に感染していることが分かり、別の病院に1ヶ月程入院し、現在は治っている。

 彼女の入院中、色々な問題が持ち上がってきた。第1に言葉の問題。日本語ができないため病気を正しく理解できず、薬を飲んだり飲まなかったり、また、無断行動を取ったりしていた。第2に食事の習慣が違うため、病院食がほとんど食べられず、体重が29kg位に減ってしまった。そして、第3の問題として幼い子供と離れていることから、精神的不安に陥ったこと。また、身内がいないため面会に来てくれる人も無く、精神的にかなり参ってしまったようだ。

 通訳を利用したり、母国語での助言や励ましがあり、7ヶ月後どうにか退院できた。しかし、まだ肺の片方は真っ白で正常ではないが、働かないと生活できないため、子供と暮らしながら仕事に復帰している。周りの仲間は、子供と共に母国に帰り、休養しながら母国の家族と一緒に生活した方がいいのではと勧めるが、彼女は日本に来た目的を果たしたいと思っているらしい。

 また、同居人に関しては、地域保健所でツベルクリン検査を実施し、全員結核には感染していないことが分かり胸をなで下ろした。◆◆◆(以上、タイ人スタッフ)

所長コメント:
 このケースは外国人医療で考えられるありとあらゆる問題を抱えていた。言葉、お金、習慣、考え方などなど。幸いなことはタイ人であったことかもしれない。生活費など仲間のタンブン(寄進)で救われていたからである。実際、入院中の治療費が結核予防法によって公費で賄われても入院生活に必要な身のまわりの品さえ買うお金がなかった。退院後の生活については日本にいても借金がかさむばかりなので故国へ帰るべきと病状と併せて説明したが、病状を理解しようとしないというより理解できないようで、結局は帰国せずに、また元の環境に戻っていってしまった。 無力感ばかりが残ったケースであるが、通訳が派遣できたからこそ彼女の当時の瀕死の状況を救えたにちがいない。


(AMDA国際医療情報センター NEWSLETTER NO.35より)
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