保険料!いったいどうしてこうなるの?

 あれは去年の暮れ、クリスマスまであと1週間となった金曜日のことでした。 金曜日といえばこの日を待っていたかのように、ポルトガル語の相談が多く入るのですが、この日はポルトガル語はおろか、他の言語の相談も少なく、「時期的に帰国している人が多いのだろう。」とみんなで話していました。

 午後4時。今日はもう相談電話が入らないかなと思っていると、そこにブラジル人女性から1本の電話が入りました。事情を伺うと、「数ヶ月前、従姉妹とA市に引っ越してきた。 国民健康保険の保険料を、いとこが6,000円で、自分は23,000円請求された。2人とも結婚していないし、1人ずつ加入している。そして収入も同じです。それなのにどうしてこんなに保険料の額が違うのか納得がいかない。 今市役所にいる。」と少し興奮気味。収入も家族構成も同じとのことで、状況を確認しようと市役所の職員から話を聞くと、「A市に転入してきた時、2人とも国民健康保険加入の手続きをした。 本人は去年の所得は218万円と申告し、いとこは0円の申告となっていた。 所得調査を以前住んでいた市にしたが、未申告になっていたので、本人の申告に基づき計算し、税金(保険料)が決まった。しかし、今日、従姉妹も同じように収入があると申告したので、来月末から税金(保険料)が上がる。2人に当時の申告書類を見せて、保険料の説明もした。」とのことでした。つまり、収入が同じでも、同じように申告していなかった訳ですが、上記の通り本人に伝えたところ、「納得がいかない。全く同じように手続きをした。 算が間違っているのではないか。おかしい。 収入を黙っていれば、安くすむのか。 払いたくないと言えば、それですむのか。」と益々興奮。そこで、書類上収入に差があることになっていたこと、保険料が去年の収入によって決まり、収入が高ければ保険料が高くなること、保険加入は義務であること、所得も申告しなくてはいけないこと、保険料を支払わなければ保険が使えなくなる可能性があり、そうなると医療費を10割払わなくてはいけないことなど説明しましたが、返ってくる答えは、「同じように手続きをした。おかしい。納得がいかない。」その後は、1時間に亘りこのやり取りの繰り返し。そうこうしているうちに市役所の業務時間が終了し、電話を切らなくてはいけなくなり、結局最後まで納得してもらえず、また来週話をする約束をして、この日の相談が終了しました。

 ところが、次の週、その次の週も再電話がない。納得してくれたのかなと少しほっとしていると、年明けすぐに再電話。「自分たちが支払わなくてはいけない保険料については納得した。しかし、友達は私達と同じ給料をもらっているのに、なぜ保険料を少なく支払っているのか納得できない。おかしい。保険を監督している責任者と一緒に市役所に言いに行った方が良いと思う。」と新たな疑問をぶつけてきた。保険の概要、所得は申告しなくてはいけないこと、友達が同じ収入なのか、どの様に申告しているのか、本当のところは分からないだろうと伝えたが、どうしても納得がいかない様子。そうかと言って、市役所に訴えて友達との関係を悪くしたくないと言う。結局弁護士と話がしたいとのことで、外国人の相談に乗っている弁護士の連絡先を伝えました。

 その後、彼女からの電話はありません。果たして納得したのでしょうか。これまでの相談の中でも、今回のように、日本人には当たり前である保険に加入することの意義やメリット、またその概要を理解して貰うことの難しさを感じさせられることが幾度もありました。加えて、この4月から介護保険制度が施行され、私達は新たに保険料を納めることになりました。外国人も例外ではなく、外国人登録をしており、永住資格のある人や在留期間が1年以上ある人、生活実態などから1年以上滞在すると認められる人で、65歳以上と40歳から64歳までで医療保険に加入している人は介護保険に加入しなくてはいけません。そうなると、今後保険料が上がったことの理由、介護保険に加入しなくてはいけない理由などの説明を求められることになるでしょう。一層の混乱が予想されます。どの様な答えが準備できるか少々頭の痛い所ですが、今後とも、厚生省の外国人に対する医療政策の見解を踏まえ、相談者が納得できる根拠を持って、的確な情報が提供できるよう努めてゆきたいと思います。
◆◆◆(センター東京事務局S)


(AMDA国際医療情報センター NEWSLETTER NO.32より)