医薬品の個人輸入

 自国では入手可能な医薬品が、日本では手に入らないため、個人で日本に持ち込みたいとか郵送したいという相談がときどきあります。例えば、自国からマラリアの予防薬を友人に持ってきてもらうことは可能だろうかという相談がありました。海外旅行の前に渡航用予防接種等を希望する方がたくさんいますが、日本では認可されていないワクチンや薬があります。マラリア予防薬もそのひとつで、副作用が強いなどの理由から、特別に輸入しているところから入手するか、例外的にマラリア治療用の薬を予防目的に処方する以外は、現地で調達するようアドバイスされるだけです。マラリア感染の危険がある地域は多く、そのためなんとか渡航前に薬を入手したいということでした。また、抗鬱剤のPROZACはよく効く薬として欧米では馴染みのある薬ですが、日本では使われていません。日本で認可されている別の抗鬱剤が効けば、それで代用することもできます。しかし代わりの薬がみつからずPROZACでないとということになり、自国から郵送してもらいたいという相談も何度かありました。

 上記のような場合、ある個人のために使用することが認められる範囲において、医薬品の持ち込みあるいは郵送ができます。ただし、要指示薬は、医師の処方箋をつけた上で使用1ヶ月分以内、処方箋がいらない医薬品は包装をあけない市販されたままの状態で2ヶ月分以内という制限があります。この1ヶ月分とか2ヶ月分を越える量がどうしても必要なときは、理由書の提出が求められます。また麻薬や覚醒剤などは、たとえある国で合法的に売られていても、日本への持ち込みは禁止されています。又、ワシントン条約で規制されている動・植物を含んだ漢方薬もたとえ個人使用目的といえども持ち込めません。どのような薬の輸入が可能か等は、厚生省薬務局監視指導課や税関の薬事担当の係にたずねることになります。なんらかの形で日本に薬を持ってきていても、注射器がないとその薬が使えないということもあります。注射器は、麻薬に用いられることがあるため日本に持ち込むことは許されていません。また医療者以外の人が日本で注射器を買うことは普通できません。従って、その薬を医療機関に持っていって注射してもらうというのが考えられますが、日本で認可されていない薬を注射するのは原則として医師もできないことでしょう。

 日本への個人輸入とは反対に、日本の薬を海外に送りたいという相談もあります。本国にいる友人が白血病と診断され、その担当医が治療には日本の薬が最も効果があると言っているので、買って送ってやりたいという電話がありました。このケースについては、まず日本の医師が患者を診察したうえでないと薬を処方できないし、その薬を輸入してよいかどうかは送る先の国の法律に従うことになり、薬を送ることは難しいと回答せざるをえませんでした。友人に治ってほしいと願う相談者の気持ちもわかる反面、その人に本当に効く薬かどうか、そして輸出していい薬かを客観的に判断できる材料がなくては、送っても無駄になるだけです。バイアグラが個人輸入され安全でない使われ方がされる可能性があって、最近日本でもこの薬が認可され医師の指導のもとに使えることになりました。薬の効能と副作用をめぐる国の考え方が異なる中で、薬を使う人々と情報が国境を越え行き来する時代であることを強く感じます。(センター関西)◆ ◆ ◆


(AMDA国際医療情報センター NEWSLETTER NO.29より)