夫婦でお産がしたい

 妊娠6ヶ月で、胎盤が下がってきていると診断されたが、原因等の詳しい説明がよくわからなかったので、スペイン語の通じる産婦人科を紹介して欲しいとの相談を受けた。残念ながら、関西では受け入れてくれる産婦人科の情報がないこと、電話でならセンターが通訳できることを伝えた。次に、スペイン語で書かれた妊娠、出産に関する冊子が欲しいと希望したので、当センターが開催した両親学級のテキストを紹介した。また、妊娠中の夫婦のことについて、心理的、精神的に相談できるところを紹介してほしいと言うので、いくつかの相談機関を紹介した。しかし精神科の紹介も希望したため、まず医療機関に確認をとるので再度電話をくれるようにと頼んだ。

 ここまで比較的スムーズに運んだこともあって、次の日の電話で、実は本当に相談したいことというのは日本人の夫による暴力だと聞いて驚いた。普段はそうではないのに、妊娠しておなかが大きくなってくると、夫は、はたいたりひどいことを言ったりするという。前の子を妊娠したときもそうだったらしい。「妊娠中の子どもにも影響がある。」と言っても、夫は「そんなことはない。」と妊娠についてあまり知らない様子。夫に勉強して欲しいのだが、市役所でくれたパンフレットも夫は読んでくれない。夫も対象にした妊娠について書かれた本をプレゼントして、仲良くする足がかりにしたいので、日本語で書かれたそのような本を教えて欲しいと頼まれた。その時は「夫婦でお産をしよう」といった本を紹介し、産婦人科へ一緒に行って、先生に説明してもらってはどうかといったアドバイスしかできなかった。

 相談時に、彼女が「女性センターに相談に行ったところ、同じ様な問題を抱えている人は多いみたいだった。」と言っていたこともあって、“ドメスティック バイオレンス”をキーワードにインターネットで検索したところ、男女共同参画審議会女性に対する暴力部会における議事要旨から、インターネット裁判、新聞の特集記事、果ては個人体験記まであり、ざっと見ただけでもかなりのケースがあることがわかった。ほとんどの場合、日本人同士の夫婦あるいは恋人の間に起こっていたが、中には日本人と外国人の夫婦の例もあがっていた。もちろん外国人同士の間でも起こっていることは容易に想像できる。相談できる友人や親戚が遠く離れた自国にいたり、この件の相談者のように、夫の母親とは深いつきあいがないので、相談しにくいと感じている人たちの助けになるように、どのようなことが起きているのか、どのようなグループ等とネットワークを組んでいけばよいのか、といった情報を集めていく必要性を強く感じた。
(センター関西発)◆ ◆ ◆


(AMDA国際医療情報センター NEWSLETTER NO.28より)