「特定疾患(いわゆる難病)医療費助成」

手続き遅れて泣かないように

難病医療費等の助成対象疾病一覧

 8月の上旬に、南米出身の男性Aさんより日本語で相談が入った。少し方言のある日本人かと思うほど日本語を流暢に話す。相談内容は特定疾患医療費助成(以下難病医療費助成と呼ぶ)に関することであった。

 Aさんは、東京都内の病院で20日間ほど検査を受けた結果、膠原病と診断され現在入院中。国民健康保険には加入している。今後何ヶ月にも亘って治療が必要とのこと。病院の人から、Aさんの病気は「難しい病気」のため医療費援助があり、1ヶ月14,000円で済むので、帰国をせずに日本で治療を続けることを勧められたそうである。それについてはAさんも納得しているところであるが、問題は医療費助成の手続きがまだ済んでいないということだった。病院にお願いはしているのだが、手続きが進まないうちに7月も終わってしまった。退院後に申請しても大丈夫なのかと、こちらに相談してきたわけである。病院の人にあまりしつこくお願いするのも気が引けるし、自分が外国人だからきちんと対応してくれないのではないかと、ふと漏らす。

 まず「難病医療費助成制度」について、ここで少し触れてみたい。東京都では1998年10月1日の「難病医療費助成制度」改正により、新たに4疾病が追加され、国庫対象41疾病、都単独23疾病の計64疾病が難病の対象となった。また、東京都では同年5月1日の制度改正に伴い、一部の疾病を除き、これまでの自己負担ゼロから一部自己負担金が発生するようになった。具体的には入院の場合は月額14,000円(限度額)、外来は月額2,000円(限度額)が自己負担となる。因みに、これまで通り自己負担ゼロの疾病は「スモン」「クロイツフェルト・ヤコブ病」「劇症肝炎」「重症急性膵炎」「先天性血液凝固因子欠乏症等」「人工透析を必要とする腎不全」及び前述以外の難病で重症と認定されたケースである。

 Aさんの疾病は膠原病とのことだが、膠原病とは病気の名前ではなく、いくつかの病気の総称であり、その全てが難病の対象ではない。例えば全身性エリテマトーデスは難病対象疾患であるが、慢性関節リウマチは対象とはならない。Aさんは正確な病名を知らなかったが、病院の方から医療費助成について説明され、入院中で1ヶ月の医療費が14,000円であることから推測するに、難病対象疾患であることはまちがいないであろう。しかし問題は、Aさんが語っているように「手続きの遅れ」である。

 Aさんの話を聴きながら思い出したのは、7月4日付毎日新聞に掲載されていた「難病患者はいま・・・」「重症期去って認定されず」という見出しである。重症の急性膵炎にかかり、生死の境をさまよった都内の男性が、退院後に難病医療費補助が適用されることを知り、都に申請をしたが、「すでに重症ではないため、認められない」という返事をもらったとのこと。さかのぼって医療費の補助はしないのが原則で、結局支払った医療費は200万円を超え、現在も通院に月3万円かかっていると、記事には書かれていた。病院の医師は、患者さんは重症だったので、申請すれば絶対に認められると思っていたらしい。

 すると、Aさんの身の上にも、このまま放っておくと同じことが起こらないとは限らない。すぐにでも病院に、できればソーシャルワーカーに、手続きについて再度相談するように勧めた。また、病院の方に相談しづらいのであれば、難病医療費助成の申請窓口である居住地の保健所に電話をかけて、今こちらに相談したように話をしてみて下さいと、保健所の案内をした。それでもAさんはずいぶんと遠慮がちになっていて、何か他の医療費援助はないですかと尋ねてくる。そこで、「高額療養費制度」について説明すると、それで妥協しそうな感じである。高額療養費制度を使った場合の自己負担額は一月63,600円で、難病の医療費助成と比べると、月々50,000円近くも多い。あきらめないで、是非とも、もう一度病院または保健所に話をするようにと伝えた。それはAさんに与えられた権利なのだから。

 日本語を流暢に話すとはいえ、入院中で、外国人であるAさんが自ら保健所に出向いて、書類をそろえるのは難儀である。身近にそういったお手伝いのできる家族、知り合いがいるのかどうかは、あいにく尋ねなかったが、Aさんが安心して治療に専念できるように、病院からの説明がもう少し欲しいところである。申請時に病状が改善されていると、難病と認めてもらえないということもある。

 それにしても、Aさんが相談の中で言った言葉が印象的だった。それは、「ずっと健康だったから国保の保険料を払うのはもったいない気がしていたけど、突然こんなことになって、国保に入っていて本当によかった」ということだ。長いこと電話相談に携わってきたが、こんなにしみじみと保険制度のありがたさを語る言葉を聞いたのは初めてである。だからこそ、その保険を有効に使ってほしいと願わずにはいられない。(センター東京発)◆ ◆ ◆


(AMDA国際医療情報センター NEWSLETTER NO.26より)