知らないと損する制度

 AMDA国際医療情報センターで働き始めた頃、超過滞在や保険の無い在日外国人からの相談が多いのかという質問をよく受けました。また、外国人問題といえば、超過滞在・人身売買といったことを思い浮かべる人も少なくないのではないでしょうか。確かに最近になって、そういった問題の影響から、外国人の人権という言葉が、公的な場面で使用されるようになってきているということを聞いたことがあります。しかし実際には、様々な背景をもった外国人が生活しており、必ずしも問題を持っているのは超過滞在の人だけではありません。また、その抱える問題は、決して画一的ではなく複雑多様です。

 医療・福祉の仕事に携わっていると、使うことが出来るサービスがあるにも関わらず、そのサービスを知らないがために適切な援助を受けることが出来ない人と遭遇します。先日、ブラジル人の女性からこんな相談がありました。「友人が1年前乳腺の全摘手術をうけた。手術を受けて通院を続ける必要があるが、お金が足りなくなって治療をやめると言っている。治療を続けるために援助をしてくれるところがないだろうか。国保はあります。」このような場合使えるのが、高額療養費払い戻し制度です。

<高額療養費払い戻し制度>

 健康保険および国民健康保険加入者本人または家族が支払った医療費(保険医療費自己負担分)が、1ヶ月6万3,600円を超えた場合(低所得者ー市町村民税非課税世帯は3万5, 400円を超えた場合)に、その超えた額が戻ってくる制度。但し、以下の条件をすべて満たすこと。
 

  1. 1ヶ月とは月の1日から末日のことで、2ヶ月にまたがったら月別
  2. 2つ以上の医療機関にかかった場合は医療機関別で歯科は別また、総合病院では各科別
  3. 入院・外来別


 また、以下のような場合は、負担軽減の措置がある。


  1. 同一世帯2人以上において同一月にそれぞれ3万円以上(低所得者は2万1,000円以上)の保険医療費自己負担分が生じた場合、その額を合算する。
  2. 同一世帯において最近1年間のうちに4回以上高額療養費が支給された場合、4回目から3万7,200円超えた額が戻る。
  3. 血友病・人工透析を必要とする腎臓病患者・抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群患者(血液凝固因子製剤に起因するHIV患者含む)は、申請し特定疾病療養受領証の交付を受けることにより、自己負担額は1ヶ月1万円となる。

    (手続きの方法)
    窓口は、健康保険は所轄の社会保険事務所または所属の組合, 国民健康保険は市区町村役場で、申請には、高額療養費支給申請書・医療費領収書・保険証・印鑑・通知等が必要となる。

    (注意点)
    被保険者が高額療養費の対象になったかどうかはレセプトで審査され、対象になった被保険者には、市区町村役場より書面で対象になったむね通知される。つまり、その通知が来た時点で申請が可能となる。そして申請しない限り、払い戻されない。また、このようにいくつかの手順を踏まなくてはいけないため、実際に払い戻されるのは2・3ヶ月後である。


 保険や福祉サービスの情報は、このように複雑です。また、実際に困難な問題に直面し、新たなニーズが生じて初めて関心を持つといった傾向があるため、周知のものとなりにくく、言葉の通じない外国人ならなおのこと情報から取り残されてしまうといったことがあるでしょう。そのような現状を少しでも改善していくために、サービスを提供する側は常に情報の収集につとめ、それを社会に返す努力をしなくてはならないのではないでしょうか。そしてまた、サービスを受ける側も、積極的に情報収集につとめていくことが大切です。

 ここ数年、高齢者問題が取りざたされるようになりました。しかし、高齢者に関しては、それほど心配ないと感じることが良くあります。なぜなら、みんなが問題意識を持っているからです。むしろ逆に、みんなが問題意識を持っていない外国人問題・障害者問題・児童問題への不安をかき立てられます。その様な問題解決のために常に開かれた目を持ち、社会に役立っていくことができるよう努めていきたいものです。
(センター東京発)◆ ◆ ◆


(AMDA国際医療情報センター NEWSLETTER NO.24より)