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バイリンガルとセミリンガル

 小さい時から自国と日本の両方を行ったり来たりしている小学生がセミリンガルなので、専門家にみせたいと相談を受けたことがありました。セミリンガルというのは、多言語使用者がどちらの言語でも(母語でも)抽象的思考ができず、複雑な表現もできないことをさします。この子の両親はほとんど日本語を話さないそうで、子どものために日本語を、両親のためには英語を話す、セミリンガルに通じたカウンセラーを希望していました。帰国子女の会や国際学校に問い合わせてみましたが、そのような専門家についての情報は得られませんでした。関西にある英語によるカウンセリングをしてくれるところをいくつか紹介しましたが、結局この子どもの家族は帰国して、現在専門家によるセラピーを受けているそうです。

 2言語が使われる環境で育つというのは、子どもの言語習得や概念の理解において有益なこともあれば、よくない影響を及ぼすこともあります。多民族国家や、移民を多く受け入れてきた国では、すでに事例も研究も多数あるようですが、日本国内では外国人労働者が増えた近年になって、ようやく注目されはじめた問題です。両親が使う言語と居住国言語の両方を、問題なく使い分けていく子どもは、もちろんたくさんいるでしょう。しかし、母語か居住国言語、あるいはその両方で言語習得が遅くなったり、学習障害を示したりする子どもの事例が日本でも報告されています。問題が生じた場合、何歳から2言語以上使われる環境におかれるようになったか、家庭、あるいは学校や保育園で何語が使われているか、両親がどの言語に重点をおこうと考えているか、それぞれの言語に対する社会の価値観などさまざまな要因を考慮しなければなりません。

 別のケースに、日本で生まれ、しばらく自国に戻っていた後、再び日本に来た4歳の子どもが「ここ、ここ」「あった、あった」くらいの他、言葉をほとんど話さないという相談がありました。自国でCTスキャンによる検査を受けたところ特に脳に異常はないと診断されたそうですが、日本では障害児の学園に通い、月1回心理療法士にも診てもらっていて、2歳位の発達と言われているとのこと。まわりの人たちは、2つの言語の間で混乱しているのか、本当に障害があるのか、もう少し様子をみてみたらと言っているようでした。しかし相談してきた父親は、専門家に診せたいと言い、日本で無理なら帰国して治療を受けさせることを希望していました。

 言語障害と断定されればすぐにでも効果的な治療、セラピーを受けさせたいというのが親の心情でしょう。ただし外国人でも日本においては、基本的に日本語で治療や訓練を受けることになるでしょう。文献には、家庭では両親の母語を使い、言語訓練を日本語で行って効果がでるのか、でないのかは一概には言えないとあります。子どもが何語を話すようすすめていくか、両親が方針をしっかり決めることが大事になるでしょう。また、2つの言語の間で混乱してしゃべらないのだとしたら、時間がたてば解決されることもあるでしょうし、上記のセミリンガルと似た状況とも考えられます。言語訓練を受けるとともに、子どもに無理のない方法で2言語を使う生活に順応していく手だてを、家庭、教育の場で考え配慮していく必要があるかと思われます。

 もともと言語発達の遅れの原因というのはいくつも考えられます。そこにバイリンガルという要素が加わると問題がさらに複雑になり、医療、教育、家庭とあらゆる場面でサポートする必要がでてきます。国際化が進み、多くの外国人が日本に住むようになりましたが、今のところこのような問題に対応できる専門家はあまりいません。ここで紹介した相談でも、決定的な解決方法を示すことはできませんでした。子どもは柔軟に環境になじんでいくとは大人の勝手な見方で、日本も多文化・多言語社会になりつつあり、そこで子どもが小さいながら葛藤していることに、あらためて気付かされました。 (センター関西)◆ ◆ ◆


(AMDA国際医療情報センター NEWSLETTER NO.23より)
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