外国語による両親学級 報告
 センター関西では、出産を予定している外国人住民が言葉や文化の違いを越えて安心して出産を迎えられるよう、母国語通訳付きの両親学級を下記のとおり行いました。今回この企画を是非やってみたいと考えたのは、今までセンターに母子保健に関する電話相談が多かったこと、そして電話では相談者の顔が見えないので、直接外国人と接する機会を持ちたいと思ったためです。言語については英語による両親学級が他の団体によって行われていましたので、南米、アジアから来た人たちを対象にした、スペイン語、ポルトガル語、中国語、フィリピーノ(タガログ)語を選んで行うことにしました。

言語日程場所
スペイン語・ポルトガル語1997年7月6日&8月10日クレオ大阪西
中国語1997年7月13日&8月24日クレオ大阪南
フィリピーノ(タガログ)語1997年7月20日クレオ大阪西
1997年9月21日北野教会


 内容と参加者の顔ぶれ

 内容は、1. 妊娠中の過ごし方と母子保健に係わる制度について、あるいは2. 出産のしくみと経過、産後の注意、育児についてを、講師の助産婦、保健婦、産婦人科医から聞き、その後質疑応答を行うというものでした。尚、7月20日は参加者がなかったため、講師の方たち、フィリピンの母子保健事情に詳しい通訳の方たちと共に情報交換をしました。フィリピンでの医療システムについて聞いたり、日本においてフィリピン人が抱えやすい問題をだしあったりと、今後参考になる有意義な話し合いの場を持つことができました。
 参加者には、出産を控えている人たちのほかに、近い将来子どもを持ちたいと考えている人、すでに出産をして育児中の人、不妊の問題を抱えている人、そして外国人を受け入れている医療機関の助産婦さんや外国人支援をしている方など日本人もいたりと、様々な立場の方たちがいらっしゃいました。たまたま双子を出産した方とこれから双子を出産する方が同時に参加された日もありました。何に関心を持っているかはそれぞれ異なっていたかもしれませんが、外国人にとっては自分の国の言葉で母子保健について話を聞く機会が少なく、しかも質問に対して専門家にすぐに答えてもらうことができたせいか、一般的な内容についても、不明な点についても知識や情報を得て満足できた様子でした。

 母子保健の多様性

 今回の両親学級では、広い範囲に住む、しかも前述のように様々な立場の方たちが対象でしたので、一般論として話をするとかえって混乱するのではないかと思われたため、とりあげる内容とその説明をどうするかに苦慮しました。それというのも、命の誕生そのものには人種、国籍の差はないのですが、妊娠出産に際しての対処のしかたは文化や習慣の影響を大きく受けるからです。例えば腹帯は必要かとか、日本では帝王切開はどのような場合行われるのかとか、おむつは紙か布かなど、自分の国との違いに戸惑っている質問がいくつかでました。また医療の中でも妊娠、出産は、個々の病院で対応の方針(妊婦の検査項目、父親の付き添いや無痛分娩を認めるか等出産方法など)が違いますし、母子保健の制度も自治体によって変わってきます。さらにどのようにして日本に住むことになったかや、すでに子どもがいるとか妊産婦が働いているなど、個々の生活も考慮しなければならないでしょう。母子保健について絶対こうですと言い切れない部分が本当にたくさんあります。この多様性と、貴重な機会なのでできるだけ多くの人に短い時間で必要最低限のことを伝えたい気持ちとの間にジレンマがありましたが、幸いなことに参加者に満足していただいてほっとしました。

 課題

 今度の経験を通して、外国人対象の企画の難しさを実感しました。いずれの日も30~40名の参加者を見込んでいたものの、結果は非常に少なくゼロの日もありました。多くの人に来てもらうよう会場、言語、時期をうまく調整し、広報を効果的に行うのは至難のことで、外国人が様々な情報をどこで得るかを必死に考えて、予定よりも広報案内先をずいぶん増やしましたが、大きな反応を得られなかったのは残念でした。しかし、保健所や役所から大阪市以外で開催する予定はないかという問い合わせがあったことなどからも、外国人のための両親学級はやはり必要だと思われます。そのため、今回ボランティアとして関わって下さった産婦人科医、助産婦、保健婦、通訳の方々、そして受講者として来られた助産婦さんたちや、後援をお願いする過程でお話しする機会をもった母子保健行政担当者等、日頃から外国人医療の必要性について考え活動されている方たちとネットワークを組んで協議し、この企画を今回限りにせず、継続して行っていきたいと思っています。また、講義内容の理解の助けとなるよう各国語で作成した資料は、参加者以外からも入手したいと希望がありますので、近いうちに、より多くの人たちに利用してもらうことができるようにする予定です。

 以上、様々な新しい課題点もふまえた上で、引き続き在日外国人の母子保健について関与していきたいと思います。
最後になりましたが、この両親学級に対して助成していただいた大阪府国際交流財団、ライオンズクラブチャリティーファンド、後援をして下さった大阪府、大阪市、そして紙面の都合上お名前は省かせていただきますが、この企画をすすめるにあたって全面的に協力して下さった講師、通訳、翻訳、保育のボランティアおよび広報に協力してくださった方々に心より御礼申し上げます。(1997年10月発行AMDA国際医療情報センターNEWSLETTERNo.22より/センター関西)